中国は地理的にも歴史的にも多様な顔を持つ国であり、その広大な国土には都市部と地方部の発展格差、産業構造の不均衡、人口移動の偏りなど、多くの社会・経済的課題が存在しています。しかし、ここ数十年の中国では観光業が地方振興のエンジンとして大きな役割を果たしてきました。観光は、直接的な経済効果だけでなく、地域資源の活用や文化継承、インフラ整備など、さまざまな面で地域社会に影響を及ぼしています。本稿では、中国の観光業が地域振興策として果たす具体的な役割、その歴史的背景と成功事例、課題や今後の展望に至るまで、具体的な内容や事例を交えて紹介します。さらに、中国の経験が日本の地域振興や観光振興に与える示唆についても考えます。
1. 中国における地域振興の必要性
1.1 地域間格差の現状
中国は面積が広く、人口も14億を超える大国です。そのため東部沿海部と内陸西部の間には、経済発展の格差が顕著に見られます。例えば、北京や上海、広州などの都市部はインフラも整備されていて収入水準も高いですが、西部の四川省やチベット自治区、内モンゴル自治区などは経済発展のペースが遅れています。このような格差は教育機会や医療水準、住環境などにも波及し、地域住民の生活や将来に影響を与えています。
このような地域間格差は、都市部への人口集中を加速させ、地方の「過疎化」や高齢化、若者の流出などの社会問題を深刻化させる要因ともなります。都市部と地方部では、インフラ整備やサービスの質も相当な差があり、都市生活と地方生活の質の違いは多くの中国人にとっても明らかです。
中国政府はこの格差是正を国家的課題と位置づけており、「西部大開発」「中部崛起(中部発展)」「東北振興」など、地域別の総合的な発展戦略を打ち出していますが、従来の製造業やインフラ投資だけでは限界も見え始めています。そこで、新たな産業として注目されているのが「観光業」であり、地方経済の活性化策として期待されています。
1.2 経済発展における地方の課題
中国の地方における経済発展の課題は多岐にわたります。まず、産業集中の偏りがあります。歴史的に製造業や輸出主導型産業は東南沿海部に集中しており、内陸部や農村ではそこまで雇用創出や経済効果を生み出せていません。そのため、地方では農業が中心のままで所得水準が上がりにくく、若者が仕事を求めて都市部へ流出するという悪循環が生じています。
また、地方では伝統的な文化や自然資源が豊富であるものの、それを効率的に経済活動へ転化させるノウハウや資金調達の面で課題が残っています。観光資源の掘り起こしや、現代的な観光インフラの整備、人材の育成などを着実に行わなければ、地域活性化による持続的な発展にはつながりません。
さらに、地方自治体にとっても財政基盤が弱く、中央政府の補助金や民間投資に頼る傾向があり、独自の発展プランの策定や実行にも難しさがあります。このような中で観光業の積極的な導入や育成は、地方にとって大きなチャンスとなっています。
1.3 持続可能な地域開発の重要性
ただし、観光業の発展がもたらすのは経済効果だけではありません。自然資源や文化遺産、人々の生活様式を活用し、その価値を維持しながら持続的に発展していくことが重要です。短期的な収益向上だけを目指せば、自然環境や伝統文化の破壊、地元住民とのトラブルなどが表面化し、長い目で見ると地域の持続的な発展を阻害します。
そのため、中国でも近年は「グリーン経済」や「エコツーリズム」「持続可能な観光開発」といった考え方が重要視されるようになっています。地方政府や観光業者も、観光地開発に当たって単なる経済効果だけでなく、環境保全や地域文化の継承、地元住民の参加と受益の確保といった要素を重視するようになりました。
例えば、地方の伝統的な民家を活用した農家民宿や、少数民族文化と自然風景の調和を意識したエスニック・ツーリズムなどが人気を集めています。こうした新しい観光スタイルは、地域の持続可能な発展の好例であり、今後ますます注目される分野です。
2. 観光業の発展と中国の経済的背景
2.1 中国観光業の成長の歴史
中国の観光業は、1980年代の改革開放政策によって大きく動き出しました。それ以前は主に国内旅行が中心で、外国人旅行者の受け入れはごく限られていました。しかし、経済の自由化と国際交流の拡大に合わせて、政府も観光業の発展に注目し、1985年に「中国旅遊局」(現:中国文化旅游部)を設置して本格的な観光政策を打ち出しました。
1990年代に入ると、世界遺産登録などを背景に中国各地への外国人ツアー旅行が一気に伸びました。特に北京市の紫禁城、西安市の兵馬俑、桂林の自然景観などが人気となり、国際観光地の地位を確立しました。また、国内経済の成長とともに中国人の所得も上がり、「国内観光ブーム」が巻き起こりました。これは「五一(労働節)」「国慶節」など大型連休の制度化も後押しとなり、国内観光地が賑わいを見せました。
21世紀に入り、観光はさらに産業として定着し、「観光都市」や「観光テーマパーク」、「農業体験型観光」など新しい形態も次々に誕生しています。中国政府は観光を経済成長の柱の1つと位置づけ、地方経済活性化のため積極的な政策を続けてきました。
2.2 国家政策と観光発展の連携
中国政府が観光業の発展に注力する背景には、外国からの外貨獲得や国際イメージ向上だけでなく、地方振興や雇用促進という明確な国家戦略があります。地方政府も観光産業への投資や景観整備、文化財保護、交通インフラ拡充などを積極的に実施しています。
例えば、「美しい中国」戦略や「全域観光」政策などは、観光を地域全体に広げて地方経済のエンジンとすることを狙っています。「全域観光」とは、従来の観光名所だけでなく、農村部や郊外なども巻き込みながら、観光資源を一体的に活用して地域全体の価値を高める考え方です。2015年には「全域旅遊モデル地区」が各地で指定され、観光インフラやサービスの向上、地元住民の観光産業参入などを進めています。
このような国と地方の連携体制は、従来の産業・財政主導型とは異なり、地域資源の発掘と利活用に重点を置いたものといえます。観光政策は単なる「お客さん呼び」のみならず、地方経済や社会全体への波及効果を最大限にするための多面的アプローチが求められています。
2.3 観光業が及ぼす産業波及効果
観光業の強みは、その裾野の広さにあります。ホテルや観光バス、飲食店といった直接的な関係業種だけでなく、農産物や地元特産品の産地、建設業、交通インフラ、IT関連(オンライン予約やプロモーション)など、さまざまな産業と結びついています。
例えば、杭州の西湖観光地では、地元住民による茶畑体験や伝統工芸品の製造・販売が活性化し、観光客向けの新しいビジネスが次々と生まれています。雲南省麗江でも、観光客の増加に合わせて地元の民族衣装や食品、アート作品の流通が急速に拡大しました。このような地域密着型ビジネスは、観光業を「地域エコシステム」として機能させ、地域全体の発展をけん引します。
さらに、観光は雇用創出にも大きな効果があります。とくに女性や高齢者、若者の雇用機会が拡大し、農村部や人口減少地でも仕事を生み出しやすい傾向にあります。また、地元住民が自らホストとなることで、観光業による所得向上が直接地域に還元されるのも特徴です。
3. 地域振興策としての観光業の主要役割
3.1 雇用創出と地域経済活性化
観光業が地域振興で果たす最も重要な役割の一つは、雇用の創出です。観光地が発展すれば、入場ゲートでの係員からガイド、宿泊施設、レストラン、土産物店、交通機関、イベント企画など、幅広い職種の新たな雇用が生まれます。例えば、雲南省麗江では、観光ブームにより地元住民が民族衣装の貸し出しやホテルの経営などに参入し、数万人規模の雇用が創出されました。
また、観光業は地域の消費を活性化させる力も持っています。観光客は飲食や宿泊、買い物、娯楽など多様な消費活動を行うため、地元商店や特産品業者も潤います。例えば、福建省アモイの土楼観光地では、観光客をターゲットにした民芸品や地元グルメの販売が盛んになり、村の経済が大きく活気付いた事例があります。
雇用創出と経済活性化は、最終的に若者の流出を防ぎ、都市部への人口集中のバランスを取る効果もあります。観光業が、地方に新たな産業を根付かせ、家族が地元で生計を立てられる環境づくりに貢献しているのが実感されるでしょう。
3.2 地元資源の有効活用とブランド化
観光業は、もともと十分に活用されてこなかった地元資源、それも自然や歴史、文化、農産物などの価値を再発見するきっかけとなります。地元ならではの景観や独自の文化、伝統的な工芸や料理などが観光資源として磨かれ、結果的に「地域ブランド」として広く認知されることも多いです。
例えば、広西チワン族自治区の桂林では、石灰岩の山水風景と漓江下りが「桂林山水」として観光ブランド化され、国内外から多くの観光客が訪れるようになりました。また、多くの地方都市がエスニック観光やアグリツーリズム、文化体験型観光など、自身の強みを前面に出した差別化戦略を取り入れることで、その土地だけの「特別な体験」として観光客を惹きつけています。
このブランド力が高まれば、観光だけでなく地域の農産物や加工品の全国・世界への売り込みにもつながり、さらなる産業波及効果が期待できます。地元資源の「眠れる価値」を観光業が呼び覚まし、経済的にも文化的にも地域の自信となっているのです。
3.3 交通インフラ・公共サービスの整備促進
観光産業が発展するためには、移動や利便性の向上が不可欠です。そのため多くの地方では、観光客誘致をきっかけに、道路や高速鉄道、バス路線の新設・拡充、空港建設など大規模なインフラ整備が行われてきました。例えば、内モンゴル自治区のフフホトや寧夏回族自治区の銀川など、これまでアクセスが悪かった都市も観光ルートの充実で劇的にアクセスが改善しました。
インフラ整備に合わせて、道の案内標識や観光案内所、Wi-Fi環境の改善、観光バスの運行、トイレやゴミ箱の設置といった公共サービス面の強化も進められています。これらは観光客の利便向上だけでなく、地元住民の生活環境改善にも直結します。
また、観光業を起点としたインフラや公共サービスの向上は、地域の他産業や住民生活全般を底上げする波及効果を持っています。観光による外部需要が、結果として地方社会インフラ全体を引き上げ、全人口の生活の質を向上させるカギにもなっているのです。
4. 中国の成功事例にみる観光業の効果
4.1 杭州・西湖の文化観光推進策
浙江省杭州市の西湖は、中国随一の観光地として知られていますが、ここが成功したポイントは、単なる景色の美しさだけでなく、計画的な文化観光推進策にあります。西湖周辺は、詩や伝説、伝統的な庭園や建築物が数多く残り、歴史的にも文化的にも貴重な資源が集積しています。
杭州は「西湖景観保護条例」という独自の法令を設け、文化遺産の維持と新しい観光施設の調和を重視しました。湖畔には大型ホテルや商業開発を制限し、歴史的な建築物や伝統的な茶園、細やかな遊歩道などが整備されています。さらに、文化観光イベントや詩の朗読会、伝統芸能の上演など、観光客が西湖の「物語」を体験できる取り組みも積極的です。
こうした戦略のもと、西湖観光による経済効果は非常に高く、レストランや民芸品店、茶葉など地元産業全体が潤っています。同時に、地元住民の自発的な参加と受益を確保し、「観光による地域振興」の生きたモデルとして全国の注目を集めています。
4.2 雲南省・麗江のエスニック観光の発展
麗江古城は、ユネスコ世界遺産にも登録されている観光地です。その魅力は、ナシ(納西)族などさまざまな少数民族の伝統文化、独特な建築様式、四季を感じる自然景観にあります。都市が持つ多民族性や歴史、自然の調和を“エスニック観光”として活用した点が麗江成功の鍵でした。
麗江では、古城の修復や伝統家屋の保存といったハード面の整備だけでなく、地元住民が民族衣装体験や伝統舞踊、手工芸体験などに直接参加できる仕組みを構築しました。また、観光インフラやアクセス道路、環境保護にも注力し、持続可能な観光を目指しています。
その結果、観光による雇用が急増し、農村部の住民も観光ビジネスに参画できるようになりました。また、民族間交流や伝統芸能の継承など、観光を通じた地域文化の発信拠点としても高く評価されています。麗江は地方都市ながら、観光による地域振興・多文化共生のモデルケースとして中国国内外の注目を集めています。
4.3 福建省・アモイのエコツーリズム活用
福建省のアモイ市は中国南東部沿岸に位置し、豊かな自然や温暖な気候、美しいビーチで知られています。ここでは近年、エコツーリズムを活用した地域振興が注目されています。アモイ市とその近郊の「土楼」と呼ばれる円形の伝統集落群は、世界遺産にも登録され、歴史と自然が調和した観光地です。
アモイでは環境負荷の少ない観光開発、「自然と共生する観光地づくり」に力が入れられています。観光地には電気バスが導入され、観光客にもゴミ分別や資源使用の節約が求められます。また、環境教育プログラムやガイドツアーを通じて、訪問者が自然保護や生態系の大切さを学べるよう工夫されています。
さらに、アモイの農村地域では、有機農業体験やローカルフードイベント、生態系の再生プロジェクトなども行われており、観光収益の一部が環境保護や地域社会の発展に還元されています。こうした新しいエコツーリズムの取り組みは、観光による経済効果と持続可能な地域振興を両立させる好例として注目されています。
5. 地域振興をめぐる観光業の課題
5.1 観光地の過密化と環境負荷問題
観光業の発展が進む一方で、人気観光地では過密化やオーバーツーリズム、環境負荷の増大といった問題が発生しています。例えば、有名観光地の連休中の人混みは凄まじく、入場規制やチケット販売制限が行われるほどです。これにより、交通渋滞やゴミ問題、環境資源への過剰な負荷が指摘されています。
観光バブルの裏で、自然景観や歴史的建造物の破損、水質汚染、生態系の破壊といった具体的な問題も深刻化しています。特に一部の地方都市では、カメラマンの撮影マナー問題や、路上商売の無秩序化、違法建築の乱立なども課題として顕在化し、観光の「負の側面」が地域社会を悩ませています。
こうした課題に対し、中国各地では入場定員制の厳格化や環境税の導入、グリーンインフラの拡充など、さまざまな対応が進められていますが、観光地運営サイドと地元住民の利害調整、新たなルールづくりが今後決定的に重要となってきます。
5.2 地元住民との共生に向けた取組み
観光振興が地方社会にもたらす影響は多様です。観光による収益の恩恵が一部の事業者や外部資本に偏ると、地元住民の生活環境悪化や格差の拡大、文化伝統の形骸化を招きかねません。また、観光客の増加による生活騒音や治安問題、公共サービスへの負担増など、直接的なトラブルも後を絶ちません。
このため、多くの地方政府や観光事業者は、地元住民の意見や参加を重視した観光政策に舵を切っています。例えば、観光計画の初期段階から住民説明会を開き、観光開発や観光客受け入れ体制の整備を一緒に考える仕組みづくりです。また、地元住民が観光業に直接参画できる「シェア型」宿泊事業や、地域イベントの共催などを通じて、住民の受益と達成感を高めています。
住民との共生を実現するには、観光による利益配分の仕組みや、地元独自のルールづくりが不可欠です。地域コミュニティと観光業が相互に信頼し合い、協力して観光地づくりを進める努力が今後も求められます。
5.3 観光の質向上と持続可能性
現代の観光客は、「単なる名所巡り」にとどまらず、体験や交流、地域の価値やストーリーに共感できる“深い観光体験”を求める傾向が強まっています。そのため、観光地側も「質の向上」と「持続可能性」を念頭に置いた戦略が必要になります。
例えば、安易な大規模開発や外部チェーンホテルの誘致による短期的な経済効果だけでなく、地域独自の文化や自然、生活風景を活かした「ホスピタリティ」や「体験価値」を重視する方向性です。観光ガイドやサービス従事者の研修、外国語対応や多文化理解の促進なども、観光業の質を左右する重要なポイントです。
また、観光地の持続可能性を保つためには、来訪者数の管理や観光拠点の分散化、地域資源の再生や環境保護、観光収益の地域社会への再投資といった多面的な取り組みが不可欠です。質の高い観光地づくりを通じて、長い目でみて安定した地域振興の実現が目指されています。
6. 日本への示唆と今後の展望
6.1 中国経験から学べる地域振興策
中国の観光振興の戦略や実際の取り組みからは、日本の地域振興にとってもたくさんのヒントがあります。たとえば、「全域観光」の考え方は、特定の人気観光地への集中を避ける分散型観光戦略として、日本の地方都市や農村でも応用が可能です。
また、自然資源や歴史・文化を“共創”コンテンツとして磨き上げ、住民参加型の観光開発を進めるという経験は、過疎化や人口減少に悩む日本の地方自治体にとっても大きな参考になります。観光収益が住民全体に還元される仕組みづくりや、観光を通じたコミュニティ・ブランドの再構築も日本社会に求められる重要課題です。
環境保護、バリアフリー観光、防災・リスクマネジメント、観光客の多様化対応など、実用的なノウハウや失敗事例まで、中国の蓄積された知見には学べることが数多くあります。日中両国が経験を共有し合いながら、互いの発展につなげる仕掛けが今後さらに必要になるでしょう。
6.2 日中観光交流の可能性
中国と日本の観光交流は、お互いの国民にとっても好奇心や学びの場、心の癒しとなります。昨今ではインバウンド観光だけでなく、相互に観光PRや観光人材の交流事業、共同プロモーション、EBPM(エビデンスベース・ポリシーメイキング)に基づく政策設計など、「観光を通じた地域振興のノウハウ交換」が一層進んでいます。
今後は、AIやビッグデータ、デジタルツインなど最新のテクノロジーを駆使した観光情報システムの共同開発、環境観光やエスニックツーリズム、人材育成プログラムの開発など、広範な分野で協力が期待されます。そして、コロナ禍を経て広がったオンライン観光やバーチャル体験、リモートツアーなど新しい観光商品の共同開発も注目されています。
観光を通じた国際理解と経済効果、地域の持続可能な発展をめざして、日中双方が信頼を深め悩みを分かち合う「観光友好都市」や「観光人材ネットワーク」などが構築されることで、新たな地域振興アイデアの発信源となるでしょう。
6.3 将来の地域観光振興への課題と提案
今後の地域観光振興に向けては、多様化する観光客のニーズや旅行スタイルにどう対応していくかが課題です。「体験型観光」「コミュニティ型観光」「サステナブルツーリズム」など、観光の新しい枠組みを地域社会と一緒に構築する取り組みが必要とされているのです。
一方で、都市部や人気観光地への依存を脱却し、過小評価されてきた地方都市や農村、少数民族地域などの価値を再評価することも大切です。そのためには、地方自治体・NPO・地元企業が連携した観光戦略の再設計や、若者や女性、高齢者の観光参画機会の拡大が不可欠です。
また、デジタル化やマーケティングスキル、グローバルな視点を持った観光人材の育成が、将来の地域観光振興を支える大きなカギとなります。観光業という共通のプラットフォームを活かし、経済・文化・人材の「三位一体」で協力することが、グローバル時代の地域づくりにとって一層重要になっていくでしょう。
まとめ
中国の観光業は、地方振興策としてきわめて大きな役割を果たしてきました。ただの経済的な波及効果だけでなく、地元資源の再発見やブランド化、住民参加や社会インフラの底上げなど、さまざまな領域で地方生活を豊かにしてきたのです。しかし同時に、観光地の過密化や環境負荷、住民との摩擦といった課題もあり、「持続可能な地域開発」をいかに達成するかが求められています。
今後は、観光の質と地域らしさを追求しながら、多様な人々が参加・受益できる観光地づくり、テクノロジーの活用や国際交流など、時代に合った地域活性化の知恵が必要です。中国の成功例や課題から学び、日本や他国の地域振興にも活かしていくことが、アジア全体の未来につながるといえるでしょう。観光という無限の可能性を、より豊かで持続可能な地域社会づくりの柱として活用していくことが今、私たちに求められています。