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   食品ロス削減の取り組みとその効果

中国では、急速な経済成長と都市化が進む中で、食品ロスの問題がますます注目されるようになっています。食料の生産量が世界トップクラスである一方、流通過程や消費段階で大量の食品が無駄になっている現状も無視できません。この記事では、中国における食品ロスの現状から、その原因、政府や企業、消費者レベルでの取り組み、そして最新のテクノロジーを活用した効率化まで幅広く紹介します。最後に、日本との比較や今後の展望についても触れ、日中協力の可能性にも迫りたいと思います。

目次

1. 食品ロスの現状と課題

1.1 中国における食品ロスの現況

中国は世界最大の人口を抱える国であり、毎年膨大な量の食品が生産・消費されています。しかし、農場から食卓に届くまでの過程で多くの食料が失われているのが実情です。たとえば、中国農業科学院の調査によれば、全国の食品ロスは年間3,500万トンにものぼると言われています。この膨大な量は、主に農業生産現場での収穫後ロス、輸送・流通過程の傷み、そして消費段階での食べ残しに起因しています。

特に都市部では、外食文化の発展や豊かな生活を背景として、飲食店や家庭での食べ残しが増加傾向にあります。中国ではおもてなし文化が強く、“多く頼み、残すことが美徳”という側面が残っていて、グループでの会食時などに注文過多となりがちです。その結果、食べきれずに捨てられる料理が多くなり、これが食品ロスのひとつの大きな要因となっています。

さらに、農村部から都市部への長距離輸送の過程で、新鮮な野菜や果物などが傷んで商品価値を失い廃棄されるケースも非常に多いです。このように、中国全体で見ると、食料供給チェーンの各段階でさまざまな原因による食品ロスが日常的に発生しています。

1.2 食品ロスが社会および経済にもたらす影響

食品ロスによって社会や経済にもたらされる影響は計り知れません。まず、食糧が無駄になることで、本来必要とされる栄養が受け取られず、食品価格の高騰や貧困層への供給不足につながるおそれがあります。特に都市部では食料廃棄量が多い一方で、農村部や貧困地域では栄養不足や安定した食料供給が課題とされているため、格差問題の一因にもなっています。

また、食品廃棄物の処理にも大きなコストがかかります。食品廃棄物はごみ処理施設や埋立地で膨大なスペースを必要とし、焼却や分解によって温室効果ガスが発生するため、環境への負担も深刻です。これらの悪循環は、経済成長と環境保護の両立を目指す中国にとって頭の痛い問題となっています。

さらに、食品ロスによる経済的損失は非常に大きく、農業従事者や流通業者、飲食業界など多くの産業にも波及しています。中国政府の推計によると、食品ロスによる経済的損失は毎年数千億元にものぼるとされており、この損失をいかに減らすかが急務となっています。

1.3 国際比較と日本との違い

食品ロスの問題は中国に限らず、世界各国でも共通の課題です。しかし、各国ごとにその原因や対策には違いがあります。たとえば日本では、食品ロスの大半が消費段階で発生しており、家庭やスーパーでの商品廃棄が主な原因とされています。一方で中国の場合、農業生産地から都市部までの輸送・流通過程でのロスも大きな割合を占めているのが特徴です。

実際に、中国は広大な国土を有しており、距離による輸送中の損失や、保存技術の未発達な地域での腐敗が頻繁に発生します。それに対し、日本では冷蔵・冷凍保存が徹底され、物流の効率化が進んでいるため、流通段階でのロスは相対的に低い水準です。加えて、日本では「もったいない」精神が根強く、少量注文や余った食品の持ち帰りがある程度一般化していますが、中国ではまだこの文化が十分根付いていません。

国際比較で見ると、EUやアメリカでも同様に食品ロス対策が進められていますが、中国には中国ならではの課題と取り組みが求められているのです。

2. 食品ロス削減の背景と必要性

2.1 持続可能な発展目標(SDGs)との関連性

食品ロス削減とSDGs(持続可能な開発目標)は密接な関係があります。SDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」には食品廃棄の半減が掲げられており、中国もこの目標達成に向けて積極的に取り組んでいます。食料の持続可能な生産、流通、消費を進めることで、世界的な食糧危機にも対応できる社会を目指しています。

この取り組みの背景には、国際社会からのプレッシャーだけでなく、自国の資源や環境問題に対する危機感もあります。中国は世界最大の人口を支えるためにぴったりと均衡の取れた供給網が不可欠ですが、この供給網に過剰な負担がかかると将来的なリスクが高まります。

食品ロスの削減は、単純な経済的損失の回避だけでなく、社会全体の資源効率化、環境負荷軽減、世界的な責任の一環としても極めて重要な視点となっています。

2.2 中国の人口増加と食料供給への影響

中国の人口は14億人を超え、今後もしばらく増加傾向が続くと予想されています。人口が増えると、その分食料の需要も急増しますから、限られた資源をどのように有効活用するかがこれまで以上に問われてきます。たとえば、もし食品ロスを半減できれば、数千万人分の食料が確保できるほどの効果が期待できるのです。

都市化が進む中、地方から都市部への人口移動が活発化し、食料の需要が特定の都市に集中するケースも増えてきました。その結果、長距離輸送による食品ロスだけでなく、都市部での大量消費と廃棄が課題となってきています。資源の効率的利用とともに、安定した食料供給チェーンの再構築が急務となりました。

また、人口構成の変化や所得向上により、食生活が多様化・高級化しています。肉類や乳製品の消費が増える一方で、これに伴う食品ロスも比例して増加する傾向があります。こうした変化に対応するため、食品ロスの根本的解決が社会全体のテーマとなっています。

2.3 環境保護と資源の有効利用の観点

食品ロス削減のもう一つ大きな意義は、環境保護と資源の有効利用にあります。食品が無駄になれば、その生産過程で投じられた水、肥料、エネルギーなどの資源も一緒に失われてしまいます。中国のように水資源の偏在や環境汚染に悩む国にとって、これは避けなければならない事態です。

たとえば、農場で収穫された作物が消費されずに廃棄される場合、その栽培に使った土地や肥料、水がすべて無駄になってしまいます。これが大量に積み重なると、環境負荷の増加や持続可能な農業の阻害要因となりかねません。

また、近年では地球温暖化の進行や異常気象の増加が、食料生産にも悪影響をもたらしています。このような状況で、ひとつでも多くの食料を無駄なく消費することが、資源の適正利用と地球環境の保護につながるのです。

3. 中国政府と企業の食品ロス削減策

3.1 政策と法規制の導入状況

中国政府は近年、食品ロス削減に向けて積極的な政策を打ち出しています。2021年には、「反食品浪費法(反食品浪费法)」が施行され、飲食店に対して過度な注文の抑制や、食品の廃棄削減を義務付けるようになりました。この法律によって、顧客に食べきれる量だけの注文を勧めたり、食べ残しへの料金請求の許可など、さまざまな措置が取られるようになったのです。

さらに、政府は学校や企業への啓発活動も強化しています。例えば、「光盘行动(Clean Plate Campaign、空の皿運動)」という啓発キャンペーンが全国展開され、会食や各種イベントでの無駄な注文を減らそうという動きが広がっています。この運動は2013年から始まり、近年また大きな注目を集めています。

地方自治体でも条例やガイドラインの作成が積極的に行われており、食品ロス削減が社会的義務と認識されつつあります。こうしたトップダウンの政策は、中国のような大規模社会において特に効果的と考えられ、さまざまなレベルで取り組みが進められています。

3.2 流通・販売段階での具体的施策

流通や販売段階でも、ロス削減の取り組みが進んでいます。たとえば、大手スーパーマーケットチェーンでは、賞味期限が近づいた商品を割引販売したり、形が不ぞろいな野菜や果物を「お得品」として販売したりする動きが広がっています。これは消費者の「もったいない精神」を刺激し、ロス削減につながっています。

また、輸送効率の向上を目指して物流企業では冷蔵・冷凍トラックの活用や、輸送ルートの最適化、商品の梱包技術向上など、技術的な改善も行われています。これにより、農産物や生鮮食品の鮮度を保ちつつ都市部まで届けることができ、輸送中の廃棄量を減らす効果が期待されています。

一部の小売業者では、“予約制”の販売や、需要予測をAIによって高精度化することで、在庫の過剰を防ぐ取り組みも始まっています。例えば、「食べられるのに廃棄される」状況を減らすために、リアルタイムで在庫データ管理を行うシステムを導入したり、モバイルアプリを使ったキャンペーンが導入されたりしています。

3.3 食品関連企業・スタートアップの先進的な取り組み

近年の中国では、食品ロス削減をビジネスチャンスと捉える企業やスタートアップが増えています。例えば、「食べ残し食品」を購入希望者とマッチングするアプリ「惜食盒子(Save Food Box)」や、レストランの余剰食材を一般家庭向けに割安で販売するサービスなどが登場しています。

こうしたサービスの代表例としては、「Too Good To Go」や「余粮盒子」などが挙げられます。これらのプラットフォームを利用すると、飲食店や小売店の営業時間終了後に余った食品を、通常より安価で消費者が手に入れることが可能です。これにより、廃棄予定の食品が消費されるだけでなく、消費者にもお得な体験を提供する仕組みになっています。

また、人気の食品デリバリー企業では、消費者に対して「必要な量だけ注文する」インセンティブを与えるプロモーションや、セットメニューの量を事前に明記して選びやすくするなど、消費者の選択肢を広げる取り組みが進んでいます。こうした新しいビジネスモデルやサービスによって、資源の有効利用が進んできています。

4. 消費者レベルでの食品ロス対策

4.1 市民への啓発活動と教育プログラム

食品ロス削減のためには、消費者一人ひとりの意識改革が不可欠です。中国では小中学校から食品ロスの問題に関する授業が行われ、子どもたちに「残さず食べる」ことの大切さを教えるプログラムが増えています。各地の教育機関ではポスターやキャッチフレーズを使った啓発活動も展開され、子どもだけでなくその家族にも意識が広がるようになりました。

またテレビやSNS、インフルエンサーを活用した広報も積極的に行われています。たとえば、人気タレントが「光盘行动(空の皿運動)」への参加を呼びかけたり、飲食店の会計時に「残さず食べていただきありがとうございます」と伝えるなど、分かりやすい形で社会全体へ訴えかけています。

さらに、地域コミュニティや労働組合が主催するワークショップやセミナーでは、実際の食品保存方法や調理の工夫、上手に買い物するコツなど、日常で役立つ知識が学べます。こうした活動が全国各地で続けられており、着実に消費者の行動に変化をもたらしていると言えるでしょう。

4.2 食品廃棄削減のための消費行動の変化

中国の都市部では、外食時に「みんなでシェアして食べる」習慣が定着していますが、最近では「注文しすぎない」や「食べ残しを持ち帰る」という行動が少しずつ広まってきています。大都市ではレストランで食べきれない料理のテイクアウトボックスを提供するサービスも一般化してきました。

また、スーパーやコンビニでは形が悪い野菜や、“賞味期限間近”のお弁当やパンが値下げ販売され、「そうした商品を積極的に選ぶ」消費者も増えてきました。このような小さな習慣の変化が積み重なって、食品ロス削減に確実につながっているのです。

家庭でも、計画的な買い物や冷蔵庫の中身管理、余った食材の活用レシピなどがSNSや動画プラットフォームを通じてシェアされ、情報交換の輪ができています。食費の節約だけでなく「地球にやさしい行動」として、身近な努力が社会的な評価を得るようになってきています。

4.3 飲食店・家庭での実践例

実際に飲食店や家庭でどのような取り組みが行われているのでしょうか。一部のチェーンレストランでは、注文時に「適量注文」を呼びかけるポスターを掲示したり、メニューにハーフサイズやミニセットを用意して「食べきれる量」を選びやすくしています。宴会やパーティーの際も、過剰な注文を控える動きが出てきており、店員が注文数をアドバイスする例もあります。

また、多くの飲食店では「打包(お持ち帰り)」サービスが常態化しており、食べきれなかった料理を簡単に自宅に持ち帰ることができます。上海や北京など大都市では、持ち帰り用のパッケージも環境に配慮した素材を使ったものに切り替わるなど、環境負荷の低減にも気を配っています。

家庭でも、買い物リストの活用や、余った食材を使ったアイデアレシピが人気です。SNSや動画アプリでは「一週間分の無駄なく食べきりレシピ」などのコンテンツが注目されており、料理好きな主婦や若者たちが情報発信を行い共感を呼んでいます。こうした実践例が口コミやメディアを通して多くの人に広がっています。

5. 技術革新とデジタル化による効果

5.1 サプライチェーンのIT・IoT活用事例

食品ロス削減の分野でもデジタル技術が大きな役割を果たしています。中国ではIT企業や物流企業が協力し、食品サプライチェーン全体にIoT(モノのインターネット)技術を導入する事例が増えています。例えば、農産物の輸送中、IoTセンサーによって温度や湿度、振動などのデータをリアルタイムで管理し、鮮度が保たれているかを即座に把握できる仕組みです。

これにより小さな異常でもすぐ発見でき、適切な対応をとることで食品の傷みや廃棄を未然に防げるようになりました。例えば、運送中に冷却システムが故障した場合も、IoTセンターが即座に警告を出して最寄りの中継地で緊急処置を施す、といった対応が可能です。

こうしたシステムは生鮮食品だけでなく、加工食品や冷凍食品の流通でも積極的に活用されています。また、取引や在庫状況がクラウド上で一元管理できることで、余剰在庫や製造過程でのロスも効率的に把握・コントロールできるようになっています。

5.2 AI・ビッグデータによるフードマネジメント

AIやビッグデータの活用も食品ロス削減の強い味方です。大手流通企業やスーパーマーケットでは、AIを使って過去の販売実績や天気予報、イベントスケジュールなどから需要を予測し、仕入れや在庫調整を最適化しています。これにより過剰な仕入れによる廃棄リスクが大幅に減少しました。

また、飲食チェーンでは来店客数や人気メニューの動向をAIが分析し、材料の発注や調理数を自動調整しています。こうしたシステムにより、「今日は何がどれだけ必要か」をリアルタイムで知ることができ、過剰調理を避けることができるのです。

さらに、AIアプリを使って家庭の冷蔵庫内在庫の管理や、消費期限アラートを出すサービスも登場しています。例えば「スマート冷蔵庫」は、購入履歴や食品ごとの在庫数、消費期限などを自動で管理し、無駄な買い足しや期限切れの廃棄を防ぐ役目を果たしています。

5.3 コールドチェーンシステムの進化と課題

コールドチェーン(低温物流)分野は、食品ロス削減において重要な役割を担っています。中国では近年、農産物や生鮮食品の長距離輸送の際、常に一定の温度を保つコールドチェーン網の整備が急速に進められました。これによって輸送中の腐敗や傷みが大幅に減少し、安心して新鮮な食品を消費地まで届けられるようになっています。

例えば、都市近郊の農場から上海や北京などの大都市まで、24時間体制で温度管理が徹底されたトラックによって輸送が行われており、品質保持率が格段に向上しました。また、コンビニチェーンやレストランでも、倉庫から店舗までの経路すべてで冷蔵・冷凍技術が活用されています。

しかし一方で、地方や農村部、特に中西部の内陸地域ではインフラ整備がまだ不十分で、設備や稼働コストの高さが課題となっています。冷蔵庫や冷凍車両の増設、冷蔵倉庫ネットワークの拡充など、政府と民間のさらなる協力が求められている状況です。

6. 食品ロス削減がもたらす社会的・経済的効果

6.1 食料安全保障への貢献

食品ロスが減れば、その分だけ中国全体の食料供給の安定性が高まります。膨大な人口を養う中国にとって、食料安全保障は国の根幹をなす問題です。ロスが多ければ輸入に頼る割合が増えてしまい、国際的な食料価格変動や地政学的リスクに大きく左右されることになってしまいます。

食品ロス削減によって供給の無駄を減らし、地域間格差も緩和されることで、国内で持続的な食料供給体制を構築することが可能となります。最近では、一部の地域で出荷されなかった野菜や果物が、災害時や需給逼迫時に優先的に再流通される仕組みも作られており、社会全体でリスクに備える体制強化が進んでいます。

また、国内生産の安定と消費のバランスが取れてくることで、価格の乱高下や市場の混乱を抑え、庶民の食生活を守ることにもつながっています。

6.2 環境負荷の低減効果

食品ロスを減らすことで、環境への負荷軽減にも直結します。まず、廃棄食品の焼却や埋立処分から発生する温室効果ガスや、メタンガスの発生量が大幅に削減されます。中国は大都市でのごみ処理問題に長年悩まされてきましたが、食品ロスが減れば、ごみ処理施設や関連インフラの負担も軽減できるのです。

また、生産過程で使われている水や肥料、農薬、エネルギー資源の消費量も自然と引き下げることができます。無駄な生産を減らせば土地や森林破壊の抑制にもつながり、生態環境の保全にも寄与します。

最近では「循環経済」や「再生可能資源の活用」が注目されており、食品ロス削減の取り組みが、農村・都市部双方での環境対策として一層重要視されています。小規模農家や若手起業家の間では、廃棄予定の食品を家畜飼料やバイオガスの原料にするなどリサイクル活動も広がっています。

6.3 経済的メリットと新ビジネスの創出

食品ロス削減には直接的な経済的メリットも期待できます。飲食店や小売店、家庭などあらゆる段階でのロスが減少すれば、その分コスト削減が実現でき、利益が向上します。例えば、レストランが残飯を減らすことで原材料費の無駄やごみ処理費用が減り、経営の健全化につながります。

また、ロス削減をテーマにしたビジネスやサービスも誕生しています。先述のような「余った食品を安価で流通させるアプリ」や、「期限間近の食品のみを集めたショップ」などは、消費者にも新たな価値を提供しています。サスティナビリティを意識する若年層を中心に、こうした新しいビジネスモデルはますます脚光を浴びています。

さらに、データ分析やIT管理による効率化、省エネ型物流ソリューション、食材の末端消費ネットワークなど、多彩な業種で新たな起業チャンスが広がっています。今後、企業の社会的責任(CSR)やESG投資が重視される中、食品ロス対策に積極的な企業は市場の信頼も得やすくなります。

7. 今後の展望と日中協力の可能性

7.1 持続的な食品ロス削減に向けた課題

食品ロス削減の取り組みは確実に進んでいるものの、まだ課題が残っています。まず、都市部と地方部の格差が広がっており、冷蔵・流通インフラが未成熟な農村地域では廃棄量が依然として多いままです。また、「豊かさの象徴として大量注文をする文化」が完全になくなったわけではなく、一部ではまだ依然として食べ残しが多いのが現状です。

さらに、地方自治体や企業による取り組みにも温度差があり、先進的な事例が大都市や先進企業に偏っているのも現実としてあります。法律や規制の強化だけでなく、生活文化や企業風土の変革、地域間のノウハウ共有が必要不可欠です。

加えて、食品ロス削減の取り組みは、消費者参加型・現場主導型のアプローチがより求められています。法律やポスターに頼るだけでなく、実際に現場で仕事をする人々が楽しく・便利に取り組める仕組みづくりが持続性の観点から重要だということがわかってきています。

7.2 日本と中国の知見共有と協力の重要性

食品ロス対策の分野で、日本と中国はともに多くの知見や技術を蓄積してきました。日本は「もったいない」文化や高度な物流・管理技術を有しており、中国では広大な流通網をカバーするIoT、AIなどの新しい技術が積極的に実装されています。両国の強みを持ち寄ることで、相互補完型の協力が大きな成果を生み出す可能性があります。

例えば、日本の食品小売業界が開発した精度の高い賞味期限管理システムや、消費者行動を変える啓発手法が中国でも活用されれば、ロス削減のインパクトは劇的に拡大します。反対に、中国のダイナミックなIT活用や広域ロジスティクス管理のノウハウは、日本の地方圏や高齢化が進む地域にも新しいソリューションを提供できるでしょう。

また、日中協力による共同研究やビジネス交流、政府間対話の活発化により、アジア地域全体でロス削減やサステナビリティ推進のリーダーシップをとる道も開けます。

7.3 アジア地域におけるモデルケースへの発展

中国や日本の食品ロス削減の経験は、アジア全体にとって非常に参考になるモデルケースとなります。アジアは人口増加や都市化、生活水準の向上が著しい地域であり、今後ますます食料需要が高まります。そのため、中国や日本のような大規模かつ効率的なロス削減の仕組みの導入は、他のアジア各国でも大いに役立つと期待されています。

例えば、中国と東南アジア諸国の間では、野菜や果物など農産物の広域流通ネットワークづくりが進行中です。そこでは「輸送中のロス削減」や「需要と供給のマッチング効率化」など、両国の取組経験がそのまま移植・応用されている例があります。

今後は、国境を超えたデータ連携や共同キャンペーン、食育プログラムの展開など、アジア全体を巻き込んだ大きな「もったいない精神」のムーブメントを起こすことが求められています。中国と日本が知見や技術をシェアし、協力して取り組むことは、アジアの食料安全保障やサステナブルな未来構築に向けた重要な一歩となるでしょう。


最後にまとめとして、食品ロス削減は単なる「食べ物の無駄減らし」だけではなく、食料安全保障や環境保護、経済効率の向上にまで直結する国家的・社会的課題です。中国はこの分野で急速に進化を遂げつつあり、デジタル化や市民参加型の取り組み、政府・企業の協調を推進するなど多面的に活動しています。今後は日本やアジア各国と知見・経験を共有し、さらに高いレベルのサステナブル社会を目指していくことが求められます。私たち一人ひとりの小さな行動が、より良い未来へとつながっていくことに期待したいと思います。

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