中国は近年、観光大国としてめざましい成長を遂げてきました。観光地の開発やインフラの整備が進む中で、ただ観光客を呼び込むだけでなく、地域ごとの特色を生かした観光ブランドの構築や、その土地ならではのアイデンティティを大切にすることが求められています。日本に住む私たちにとっても、地域振興や観光のあり方は共通する課題です。この記事では、中国を中心に観光ブランドがどうやって作られ、地域アイデンティティとどのように結びついていくのか、またそのプロセスにどんな工夫がなされているのかについて、具体例を交えながら分かりやすく解説していきます。
観光ブランド構築と地域アイデンティティ
1. 観光ブランドの重要性
1.1 観光ブランドとは
観光ブランドという言葉を耳にしたことがあるでしょうか。簡単に言えば、その土地ならではの個性や魅力を、ひとつの「イメージ」や「ストーリー」にまとめあげ、国内外の旅行者に向けてアピールするための「顔」のようなものです。たとえば「桂林と言えば幻想的な山水画の世界」というイメージや、「杭州は西湖とお茶の都」といった印象が、まさに観光ブランドです。
この観光ブランドは、ロゴやキャッチコピーなどのビジュアル的な要素だけでなく、その土地がもつ歴史、文化、自然、特産品など、あらゆる側面がつながりあって形作られています。たとえば中国では、雲南省の「香格里拉(シャングリラ)」のように、西洋文学に由来した名前まで活かして理想郷のイメージを構築した例もあります。観光ブランドは単なる宣伝文句ではなく、地域のアイデンティティと密接につながり、観光地として競争力を高める大きな武器となります。
一方で、同じ国の中でも各地が似たような宣伝や観光資源を打ち出すだけでは、観光客の心を掴むことはできません。本当に意味のある観光ブランドを築くには、その土地固有の特徴や物語を徹底的に掘り下げ、それを外部や世界に向けて魅力的に表現する必要があります。観光ブランドとは、まさに「その場所でしか体験できないもの」を象徴する存在だと言えるでしょう。
1.2 観光ブランドの経済的影響
観光ブランドがしっかり築かれると、地域経済への影響は絶大です。一つの成功例として、中国・四川省の「九寨溝(きゅうさいこう)」を挙げてみましょう。ここは元々少数民族の暮らす山岳地帯でしたが、「秘境の絶景」というブランディングが広まり、国内外から数百万人規模の観光客が訪れる大人気スポットとなりました。その結果、地元では新しいホテルやレストラン、土産物屋の開業が相次ぎ、現地の雇用や所得水準の向上にもつながりました。
観光ブランドのイメージ戦略がうまくいけば、その土地への観光客の「リピート率」も高くなります。ただ単に観光名所を巡るだけでなく、「もう一度あの体験をしたい」「他の季節も見たい」と感じる人が増えやすいのもメリットです。こうした観光ブランドが広く浸透すれば、その土地の農産物や工芸品の販路拡大や、ふるさと納税のような寄付型の応援企画にも波及し、地域全体の活性化が加速します。
たとえば日本でも、北海道の「雪」と「食」、沖縄の「南国」を前面に出したブランディングは、観光そのものの経済効果だけでなく道産品・県産品の販売拡大にも大きく貢献しています。このように、「観光=遊び」と捉えず、地元の産業・文化との結びつきを強調する発信こそが、本当に経済にも還元される観光ブランド構築の鍵です。
1.3 他地域との競争力
中国は広大な国土を持ち、省ごとに多様な文化や自然、歴史があります。そのなかで、自分たちの地域が他の観光地とどう差別化し、競争に勝っていくかは、重要な課題です。どんなに美しい景色や由緒ある遺跡があっても、隣の省や隣国にも似たような観光資源があるのが現実です。そこで「ここにしかない体験」「この土地ならではの魅力」をブランドとして強く打ち出すことが、集客や知名度向上の決定打となります。
例えば、中国江蘇省の蘇州は「庭園の都」として有名ですが、近隣には同じく運河文化や古都の街並みを誇る杭州が控えています。その状況下で、蘇州の観光ブランドは「細やかな江南の美意識」「手作りシルクや昆曲、新旧の融合した文化」といった独自性を磨き、競争力を高めてきました。また、四川省の成都は「パンダの故郷」「美食とリラックス文化」といったイメージ戦略を積極的に展開し、国際線の増便とともに海外からの観光客も呼び込んでいます。
他にも、自然遺産としての張家界、歴史遺産としての西安や洛陽、近代都市の上海や深圳など、各都市が「自分たちならでは」のブランド構築を目指しています。観光ブランドが確立されていれば、同じような資源を持つライバル地域との差を明確にでき、観光業の収益だけでなく、広域的な知名度や信頼感も大きく育つのです。
2. 地域アイデンティティの定義
2.1 地域アイデンティティの構成要素
地域アイデンティティとは、一言でいえば「その土地に暮らす人たちが感じている、地域ならではの誇りや絆、価値観」のことです。たとえば「自分は○○の出身だ」と自己紹介するとき、頭の中に浮かぶ食べ物や風景、方言や地元の伝説、お祭りなど、あらゆる要素が地域アイデンティティを形作っています。
中国の場合、漢族をはじめとして多くの少数民族が同じ国土に共存しているため、それぞれの地域には独特のアイデンティティの要素が根付いています。例えば雲南省のナシ族には独自の文字文化や食習慣があり、新疆ウイグル自治区ではイスラム文化の影響を色濃く受けた街並みや音楽が特徴です。広東省では「早茶」の文化、東北地方では豪快なグルメと人情味溢れる方言など、地域ごとに明確な違いが見られます。
こうしたアイデンティティの核には、自然環境も大きな役割を果たしています。例えば四川の山地、江南の湿潤な水郷地帯、黄土高原の乾燥した風景、南シナ海沿岸の漁村など、地理と気候が生活文化や伝統技芸、さらには人々の性格や価値観にも反映されています。これらが有機的に組み合わさって、その土地ならではの「らしさ」が醸成されていくのです。
2.2 文化・歴史との関係
地域アイデンティティは、単に今の生活や習慣だけでなく、長い歴史や文化的積み重ねと深く関係しています。例えば四川省成都市は、2300年を超える都市の歴史があり、その間に築かれてきた城壁の遺構や、三国志の英雄・諸葛亮孔明ゆかりの史跡が、町のアイデンティティと観光資源の両方につながっています。
また、広州や上海などの港町では、西洋との交流を背景に独自の多文化が発展しました。上海には租界時代の洋風建築が並び、カフェ文化やアートシーンが根付いています。一方、内モンゴルや雲南の少数民族エリアでは、古くから伝わる祭事や音楽舞踊が、アイデンティティとして日常生活の中に息づいています。
文化や歴史のエッセンスを守り伝えることが、都市のロードマップ設計や観光ブランド戦略でとても重要です。例えば洛陽や西安のような古都は、千年以上続く都の伝統をストーリーとして掘り起こすことで、「歴史ロマン」という強いイメージが観光客の興味を引き付けています。
2.3 地域住民の役割
地域アイデンティティは、単なる観光資源やお土産の対象ではありません。一番大切なのは、地元住民が自分たちの土地や文化にどれだけ誇りを持ち、理解し、日常生活で実践しているかという点です。住民自身が「この地域は自分の誇りだ」と実感し、その思いを外から来た旅行者に伝えられれば、それが最大の地域ブランドの力となります。
中国の各地でよく見られるのが、伝統文化に関するワークショップや地元芸能の市民参加型イベントです。例えば雲南省の麗江では、街全体が「世界遺産」であることにプライドを持ち、住民が自発的に伝統音楽や民族舞踊の公演を企画しています。また、青島では地元のビール祭りに住民ボランティアが大勢参加し、観光客との交流を楽しみながら地域のイメージを高めています。
住民一人一人が地域の顔となり、「おもてなし」の精神を持つことが、観光ブランドの信頼感やリピーター獲得にも直結します。行政や企業がどれだけ力を入れても、最後に問われるのは「地元の人々と触れ合ったときの温かさや感動」です。まさに観光とアイデンティティは、住民の意識と行動によって命が吹き込まれるものなのです。
3. 観光ブランド構築のプロセス
3.1 マーケットリサーチ
観光ブランドを作る最初のステップは、徹底したマーケットリサーチです。ターゲットとする観光客がどんな世代・属性なのか、どんな体験を求めているのか、またすでにある観光地の強みや課題を客観的にデータで把握する必要があります。中国の有名観光地では、SNSやトリップアドバイザー、WeChatなどの口コミデータを解析し、「どの景色やグルメが特に評価されているのか」「旅行者が不便を感じている点は何か」といった細かい傾向まで調査しています。
初期段階では、アンケート調査や、都市住民と地元住民それぞれへの意識調査が多く行われます。特に近年では若い世代の価値観や、ライフスタイルの多様化を反映したインタビューやワークショップが主流です。たとえば、浙江省の千島湖観光地開発では、自然だけでなく「エコロジーツーリズムを求める」グループや、「インスタ映えを意識する若者層」などマーケットごとの嗜好性を細かく分類し、開発の方向性を決めています。
また政府や観光協会だけに任せるのではなく、地元企業やレストラン、伝統工芸の職人など現場の声も積極的に取り入れることが大切です。現場で感じている課題や、実際に観光客が支持しているポイントを丹念に拾い上げていく作業が、ブランドづくりの「リアリティ」や「説得力」を生み出します。
3.2 ブランド戦略の策定
リサーチ結果をもとに、どんなブランドイメージを作るか、戦略を練る工程がやってきます。特徴を単に羅列するのではなく、「誰にどんな感情や印象を持って帰ってほしいか」「どんな体験価値が独自性につながるか」を軸にして、ブランドのストーリーを構築します。
中国の例では、広西チワン族自治区の陽朔が分かりやすいです。もともと田園風景やカルスト地形だけが有名でしたが、「自転車で田舎道を走り抜けるアクティビティ」や、「竹筏で漓江を下るスローな旅」といった体験型の戦略を仕掛けることで、従来の観光と差別化したブランドイメージを作り上げました。
ブランド戦略づくりの中では、ロゴマークやカラーイメージ、キャッチフレーズなどの基本的な要素も決めていきます。「五感」を意識したプロモーションも重要で、例えば雲南省大理では「風・花・雪・月」という四季折々のイメージを徹底的に打ち出して、旅行者の記憶に強く残るブランドを成功させています。
3.3 プロモーション活動
戦略が固まったら、いよいよ実際のプロモーション段階です。プロモーション方法も年々多様化が進んでおり、ネット動画やSNSインフルエンサーの活用、オンラインイベントの開催、さらにはARやVRなど最先端技術を使ったデジタル体験など、新しい手法が次々と取り入れられています。
中国国家観光局は、近年「微信(WeChat)」や「RED(小紅書)」といった若者向けアプリで動画キャンペーンを頻繁に展開し、海外インフルエンサーを現地に招いて体験レポートを発信する事例も増えています。オフラインでも、観光フェアや国際見本市、各地での期間限定ショップを活用し、現地の特産品や文化体験を発信しています。
加えて、観光ブランドのプロモーションには、必ず地元住民や地元企業の巻き込みが欠かせません。地元の伝統芸能や食文化を旅行者体験に取り入れたり、地元学校で郷土教育プログラムを実施したりすることで、観光地全体の雰囲気や「ホスピタリティ」が格段に高まります。これによって、一過性の話題だけではなく、持続的なリピーター獲得にもつながります。
4. 地域アイデンティティの強化策
4.1 地域資源の活用
地域アイデンティティを強くするためには、その土地ならではの資源を活かすことが欠かせません。たとえば自然の風景、歴史的建築、伝統芸能や郷土料理などが該当します。中国の貴州省では、多様な民族文化や世界遺産「苗族の村落」を観光資源として活用し、地元の祭りや伝統衣装を体験できるツアーが人気です。
地域資源の活用では、単に「あるものを見せる」だけでなく、観光客にも積極的に参加してもらう「体験型」に進化しています。例えば雲南省のプーアル茶の産地では、現地の茶畑で手摘み体験や、地元の人々と一緒にプーアル茶作りを学ぶツアーがあります。これによって、観光客は単なる消費者ではなく、その土地の文化や伝統の「一員」として深く関わることができます。
さらに、地域資源を現代的な視点やデザインで再解釈し、新しい商品やサービスとして再生する取り組みも盛んです。例えば四川省では、伝統的なパンダのイラストをおしゃれな雑貨やカフェメニューに落とし込み、「可愛い文化」として国内外でブランド化する事例があります。こうした再編集は若者や外国人観光客の心を掴みやすく、アイデンティティの再認識にもつながります。
4.2 地元コミュニティの参加
地域アイデンティティを育てる主役は、やはり地元コミュニティの住民です。観光開発が一方通行の「外からの押し付け」になってしまうと、地元の誇りややる気が損なわれてしまいます。そこで行政や企業が取り組んでいるのが、「住民参加型」の地域振興です。
中国各省では、農村ツーリズムや古民家リノベーション事業を進める際、必ず地元住民のワークショップを開き、「自分たちの町の魅力は何か」「どんな未来を描きたいか」といった意見交換の場を設けています。例えば福建省の土楼(伝統的な円形集合住宅)保存プロジェクトでは、地元の高齢者や職人、若者たちが一緒になって運営チームを作り、観光ガイドや伝統技芸の実演会、地元グルメフェアなどを自主企画しています。
住民が積極的に関わることで、外部からの観光客だけでなく自分たち自身も「うちのまちってこんなに良かったんだ」と再発見が生まれ、コミュニティの絆が深まります。こうした双方向の活動が、持続可能な観光ブランドや本当のアイデンティティ強化につながるのです。
4.3 教育と啓発活動
地域アイデンティティを次世代に引き継ぐには、教育や啓発活動の充実が不可欠です。中国の多くの都市では、小中学校での「郷土教育」や「伝統芸能ワークショップ」が盛んに行われており、子どもたちに自分のまちの歴史や文化を体験的に学ばせています。
例えば湖南省の鳳凰古城では、地元の伝統刺繍や民族舞踊を学校のカリキュラムに取り入れ、生徒たちが観光客の前でパフォーマンスを披露する機会を設けています。また、内モンゴル自治区では、遊牧文化や馬頭琴演奏、民族衣装の制作などを通じて、若い世代が自分たちのルーツを知り、誇りや絆を育んでいます。
啓発活動としては、観光施設での歴史展示や、ボランティアによる観光ガイド養成講座、SNSを使った地元魅力の発信キャンペーンなどが有効です。これらの活動で「古いものを守るだけ」でなく、「新しい楽しみ方や価値観とどう結び付けるか」を考えることが、地域アイデンティティの進化につながります。
5. ケーススタディ:成功した観光ブランド
5.1 中国の成功事例
中国で観光ブランドの構築が特に成功した例には、浙江省の「杭州」と広東省の「広州」が挙げられます。杭州は西湖を中心に、「夢のような美しい水の都」「お茶と詩の文化の町」というブランディングが定着し、映画や文学作品でもしばしば舞台とされています。さらに「G20サミット」が開催されたことで国際都市としての知名度も上がり、高級リゾートや伝統茶館など多様な観光資源の活用に成功しています。
広州の場合は、「食の都」として世界的なブランド力を持っています。点心や広東料理、早茶文化などが国内外の観光客を引きつけており、近年では「広東デザイン」やライフスタイルをテーマとした観光ルートの開発も進んでいます。地元の若者と職人がコラボした新しい土産品や、アートフェスも広がり、伝統と現代感覚がバランスよく融合したブランドとなっています。
さらに、貴州省の少数民族エリア「西江千戸苗寨」は、苗族の伝統建築や民族祭りを活用した観光ブランド作りが功を奏し、「中国の最も美しい村」として欧米メディアにも取り上げられるようになりました。もともと小さな村でしたが、観光ビジネスを軸に雇用や移住も増加し、地元経済への貢献度も絶大です。
5.2 日本における地域ブランドの実例
日本でも観光ブランドの確立に成功した都市や地域は数多くあります。例えば北海道の「美瑛町」は、なだらかな丘陵と四季折々のパッチワーク畑の風景を「美しい田園の町」としてプロモーションし、フォトジェニックな観光地として世界中の旅行者を集めています。オリジナルの農産物やカフェ、フォトコンテストの開催など、住民参加型のブランド作りが際立っています。
岐阜県の「白川郷」は、合掌造り集落を「日本の原風景」と捉え直し、世界遺産として有名になりました。地元住民によるガイドや宿泊体験、郷土料理の普及などを通じて観光資源を守りながら、しっかりと経済効果を上げています。
さらに、沖縄県は「美しい海と琉球文化」でブランドを確立してきました。「沖縄そば」や「シーサー」「三線」といったアイコン的文化財を活用し、観光ブランドの進化とともに本土復帰50周年など大きな歴史イベントのPRにも成功しています。
5.3 他国の観光ブランドと比較
中国や日本以外にも、観光ブランドで成功している国や地域はたくさんあります。その中でも韓国の「済州島」は、火山島の特異な自然や済州独自の言葉・グルメを活かしたブランド戦略で、国内外の観光客を増やしました。「オルレ(徒歩観光ルート)」やテーマパーク、カフェ文化の発展により、若者やファミリー層にも広く浸透しています。
ヨーロッパでは、イタリアのトスカーナ州が分かりやすい例です。ワインと美食、芸術と田園風景という「大人の憧れ」のストーリーをブランド化し、歴史的な街並みや美術館、オリーブ畑ツアーなど多様な体験を用意しています。伝統文化を守りつつもクリエイターや現代アートと結び付ける柔軟性が、観光ブランドの強さにつながっています。
こうした世界の事例と比べても、中国の多くの都市が「地域資源+現代プロモーション」「住民参加+体験型ツーリズム」を柔軟に取り入れていることは注目に値します。グローバルな視点をもちつつ、その土地だけのアイデンティティや個性がしっかり打ち出されているブランドほど、持続的な人気や経済効果が生まれやすい傾向だと言えるでしょう。
6. 結論
6.1 観光ブランド構築と地域アイデンティティの相互関係
ここまで見てきた通り、観光ブランドの構築は単なる経済政策や観光プロモーションではありません。むしろその根底には、「地域アイデンティティ」という住民の誇り・文化・伝統・歴史など多くの要素がしっかりと根付いているかどうかが問われます。ブランドとアイデンティティは、「外から評価」されるものと「内から生み出される」ものであり、それぞれが相互に影響し合っています。
たとえば中国の西湖や九寨溝が多くの観光客に愛され続けるのは、自然の美しさや歴史物語、そして地域住民それぞれの「自分たちの土地への想い」が絶妙に調和しているからです。観光ブランドを強化するには、伝統文化や郷土料理、祭りといった目に見える資源だけでなく、住民の心の中にある「ここにしかない誇り」こそが最も大きな礎となります。
今後も観光ブランド構築のプロセスでしっかり地域アイデンティティを発掘し、地域内外の人々と共有できるストーリーに磨き上げて発信し続けることが重要です。「外からの評価」と「内なる誇り」、このふたつのバランスを追求することこそが、地域観光の未来にとって欠かせない視点なのです。
6.2 今後の展望
観光ブランドと地域アイデンティティの融合は、観光地だけでなく、地元の文化や生活スタイルを守り、地域社会自体を豊かにする大きな力があります。中国国内ではこれからも農村や小都市など未開発の地域にもスポットが当たり、「新しい観光資源の開発+昔ながらのアイデンティティ保全」という両輪の動きが一層強まっていくでしょう。
これからはSNSやテクノロジーの進歩で、ローカルがグローバルに発信される時代です。観光ブランドもさらに個性的で独自性が問われ、現地の人たちと観光客とが一緒に参加・交流できる新しいスタイルが主流になるはずです。また、世界的な環境意識の高まりによって「エコツーリズム」や「持続可能性」を前面に打ち出したブランドの重要性も高まってきます。
地域の「顔」となる観光ブランドは、経済発展だけでなく、豊かな暮らしや社会の誇り、そして人々の心を結び付ける役割を担っています。「この場所にしかない体験」「ここだけのストーリー」を作り、その魅力を世界に向けて発信することで、観光地も地域社会もより強くなれるのです。
まとめ
観光ブランド構築と地域アイデンティティは、これからの地域振興に欠かせない切り札です。中国はもちろん、日本を含む世界各国にとっても、誰もが「ここに来てよかった」「ここに住んでよかった」と実感できる地域づくりのため、観光とアイデンティティの力を賢く使いこなしていくことがますます重要となっています。未来の観光地がどう進化し、どんな新しいアイデンティティを生み出していくか、今後も注目していきたいですね。