雲霧に包まれた山々のふもとで、茶畑が広がる景色はまさに絶景である。ここ、鎮江の地では、名高い「雲霧龍井」というお茶が栽培されている。このお茶は、その名の通り、しっとりとした雲と霧のおかげで、独特な香りと豊かな味わいを持っている。今回私は、この鎮江名茶の産地を訪れ、この特別な茶のテイスティングの旅を経験することができた。
旅の始まりは、早朝の薄明かりの中、茶畑へと向かうことから始まった。茶園の案内人である老猫(ラオマオ)さんは、世代を超えてこの地で茶を育ててきた家族の一員である。老猫さんの背後には、何層にも連なる霧が山を包み込み、まるで龍の体を彷彿とさせる。この自然現象こそ、「雲霧龍井」という名前の由来だ。
「この霧がなければ、この茶の香りも味わいも違っていたでしょう」と老猫さんが微笑む。茶畑に足を踏み入れると、茶葉を手で摘む作業を間近で見ることができた。その動きは熟練の技を象徴しており、一枚一枚が叙情詩のように感じられる。
摘み取った茶葉は、すぐに製茶場へと運ばれ、そこで伝統的な手法で加工が始まる。火加減や時間管理、そして手もみ技術はまさに芸術の域である。特に印象的だったのは、茶葉を炒る工程だ。香りが室内に立ち込め、瞬時にその場が自然の芳香で満たされる。一葉一葉にこめられた職人の愛情と、天候に左右される大自然の力がこの傑作を生み出しているのだ。
そして、いよいよテイスティングの時が来た。茶室に案内され、湯気が立つ器の中に、「雲霧龍井」が静かに揺れる様子に心が躍る。口に含むと、まずその香りが鼻を抜け、続いてまろやかな甘みと少しの苦みが口いっぱいに広がる。この絶妙なバランスこそが「雲霧龍井」の魅力であり、その味わいは鎮江に根ざした文化そのものだと感じた。
老猫さんが、茶の歴史や背後にある文化について語ってくれた時、私はこの茶が単なる飲み物ではなく、地域と人々の歴史を語り継ぐ大切な存在であることをより深く理解した。「雲霧龍井」は、その栽培方法や茶摘みの技術、そして製茶の過程において人々の生活と密接に結びついている。その中で育まれた知恵と技術が、現代の私たちにも多くのことを教えてくれるのだ。
テイスティングの旅は、単なる飲食を超え、忘れがたい文化体験となった。異国の地であるにもかかわらず、心温まる人々のおもてなしと、さまざまな自然の美しさに包まれ、「雲霧龍井」との出会いが私にとって特別なものになった。
帰路につく際、茶の香りがすでに恋しいと感じる自分がいた。そして、この地で過ごした時間がしっかりと心に刻まれたことを再確認しながら、またいつかこの地に戻ってきたいとの想いを胸に抱いた。
このティスティングの旅は、
私だけでなく、多くの人々にとっても「雲霧龍井」がどのように作られ、どのような背景で生まれてきたのかを体験する絶好の機会となるだろう。その風味を味わいながら、歴史と自然の融合を感じ取ることができるこの旅が、より多くの人々に愛され続けることを願っている。