天津旅行を計画している方、または中国で個性的な建築やアートに触れてみたい方にぴったりのスポットがあります。それが「磁器の家(Porcelain House)」です。まるでおとぎ話の世界に迷い込んだような、色とりどりの陶磁器が壁や屋根にちりばめられたこの建物は、天津の中心部にある一風変わった観光名所です。今回は、磁器の家の歴史やデザインのこだわり、見逃せない見どころ、周辺のおすすめスポット、訪れる際のヒントまで、詳しくご紹介します。中国の魅力がぎゅっと詰まったスポットを、写真に収めるのはもちろん、五感で楽しんでください!
1. 感動の歴史散策
1.1 磁器の家の創設の背景
磁器の家は、その目を惹く独特な外観だけでなく、誕生のストーリーもとても興味深いです。元々は20世紀初頭に建てられたフランス風の洋館でしたが、2002年に中国の有名な骨董ディーラーである張連志氏が買い取り、約4年かけてリノベーションを施しました。北京や天津周辺で集めた歴史ある陶磁器の破片を使い、現在のような芸術的な姿へと生まれ変わったのです。
張連志氏は小さい頃から陶磁器や骨董品に強い興味を持ち、独自の審美眼を育ててきました。彼の理想は、ただのお屋敷にするのではなく、「中国伝統文化と現代芸術の融合」を形にすること。磁器の家の誕生には、そんな熱い思いが込められています。家を飾るために使った陶磁器片は、なんと7億点とも言われ、この規模の“陶器の家”は中国でも他にありません。
天津が国際的な港町として特色を持ってきた歴史とも、磁器の家は深く関わっています。昔、天津に入ってきた西洋文明と中国の伝統工芸が出会ったことで、独自の文化が育まれました。この建物には、そんな天津の多文化的な歴史がそのまま映し出されているともいえるでしょう。
1.2 建築の魅力とその歴史
初めて磁器の家に足を踏み入れた瞬間、目の前に広がるのは想像を超える色彩の世界。外壁全体に散りばめられた無数の茶碗や壺の破片、青白磁や五彩、鮮やかな琺瑯など、様々な時代・様式の陶磁器が組み合わされています。この家は、フランス租界時代の建築を生かしつつ、中国古来のエッセンスをたっぷりと盛り込んでいるのが特徴です。
もともとの建物は1920年代に建てられ、クラシカルな西洋建築らしいアーチ状の窓や装飾的なコーニスが魅力でした。その土台の上から、磁器の装飾を一つひとつ手作業で貼り付けていくという気の遠くなるような作業が重ねられています。結果として、ヨーロッパのエレガンスと中国の伝統工芸が絶妙に溶け合う、不思議な調和を持つ建物ができあがったのです。
さらに、使われている陶磁器の多くは、実際に古い食器や壺を再利用したもので、それぞれの破片に歴史が刻まれています。時には100年以上前の清朝の青花磁器のかけらに出会えることも。壁の細部を覗けば覗くほど、歴史や人々の思いが感じられ、単なる観光名所以上の重みが伝わってきます。
1.3 保存と修復の物語
磁器の家の保存と修復は、見た目以上に繊細で根気のいる作業です。天然素材の陶磁器は、強いようでいて割れやすく、また色あせやすい特性があります。天津は冬の寒さが厳しいため、建物の外壁に施された陶磁器が凍結と融解を繰り返し、ひび割れを起こしてしまうこともあるのです。
運営スタッフや修復専門家たちは、年ごとに外壁や内装を点検し、細かいかけらの補修やクリーニングを地道に行っています。新しいかけらをこっそり追加する際も、できるだけオリジナルの色合いや質感と馴染むように、特注で焼いた磁器を使うなど、目立たない工夫がされています。こういった地道な管理があってこそ、訪れるたびに変わらぬ美しさを保っているのです。
さらに、一般公開を続けながらも、毎年数日間はメンテナンスのために一時閉館されることがあります。訪れる際は、最新情報を事前にチェックするのをおすすめします。観光客が年々増える中で、保存活動を支援するためのチャリティーイベントも定期的に開催されています。単なる娯楽スポットではなく、訪れるすべての人が磁器の家の未来を一緒に作り上げている、という温かい雰囲気も感じられるでしょう。
2. アートとデザインの融合
2.1 磁器を使った独特なデザイン
磁器の家の最大の特徴は、やはり壁や屋根、手すりにびっしりと貼られた磁器片のデザインです。一見ランダムに見えて、実は龍や鳳凰、牡丹といった中国伝統の縁起物モチーフが隠れています。青花磁器で描かれた龍が屋根を這い、五彩陶磁で描かれた花々が壁に咲き乱れる――歩きながらじっくり探してみるのが楽しいポイントです。
表示方法にもこだわりが見られます。例えば、装飾のポイントごとに色のグラデーションや配置のパターンを変え、見る角度によってまったく違う雰囲気になるところも見ものです。日差しと影の差で、陶磁器の輝き具合も変化します。時間帯や天候によって、同じ場所でもまるで違う表情を見せてくれますよ。
細長い廊下や階段の手すり、天井など、どこを見渡してもアートのような細工が満載。「ここに本当に人が住んでいたの?」と驚くような場所も多く、デザイン好きにはたまらない空間です。張連志氏の大胆さと繊細さ、そして遊び心が、建物全体にあふれています。
2.2 建物に隠されたアート作品
磁器の家には、隠れたアート作品があちこちに潜んでいます。部屋の壁や床だけでなく、柱や窓枠、果ては庭のベンチや噴水にいたるまで、意外な場所に細かいモザイクアートが施されています。例えば、一見ただの飾りに見える壺も、だんだんと近寄ってよく見ると、青花磁器と二胡を奏でる人物が組み合わさったデザインになっていたりします。
展示室のひとつには、中国の歴史や人物をテーマにしたモザイク画が壁一面に掘り込まれています。ここでは歴代皇帝や有名な詩人、漢字がアートの一部として融合し、見る人を楽しませてくれます。また、2階以上の部屋には、オリジナルの陶磁器アートや、若い現代アーティストの作品が展示されることも。
さらに、ちょっとした「隠しモチーフ探し」も旅の楽しみ。たとえば、全体像を離れて見ると、壁の装飾が中国古代の長寿の象徴である「寿」や「福」の文字になっていたりします。子どもと一緒に訪れるなら、「どこに龍がいるか見つけよう!」とゲーム感覚でアートを楽しんでみるのも一つのアイデアです。
2.3 デザイン愛好家におすすめの見どころ
磁器の家は、建築やインテリアデザインに興味のある人にとってはまさに宝庫です。まず、外観の写真映えはもちろん、階段や窓辺のタイル細工、一つ一つ形や色の違う陶片がつくるリズム感に、きっと心を奪われます。本場中国の磁器アートが現代的な感性で蘇り、独自の美意識にあふれています。
どこを歩いても新たな発見があるのが魅力。天井には色鮮やかな磁器でできたシャンデリアがあり、柔らかな光が陶磁器の表面を美しく照らします。各部屋の壁には、世界各地の陶器や瓦もアクセントとして混ざっており、まるで小さな陶器美術館に迷い込んだような気分に。伝統を受け継ぐ一方で、新しい発想を取り込んだユニークな空間です。
もしもデザインのディテールをじっくり味わいたいなら、ゆっくりと時間をかけて建物を一周してみましょう。ガイドツアーも用意されているので、建築やアートの専門的な話が聞けるチャンスもあります。また、オリジナルグッズや陶磁器モチーフのポストカードも販売されており、お土産選びも楽しい体験になるはずです。
3. 見どころ
3.1 色鮮やかな陶磁器の壁
磁器の家の代名詞ともいえるのが、その壁一面にびっしりと貼られた陶磁器片です。青、緑、白、赤…カラフルな破片が優雅な模様を描き出し、どこを切り取っても絶好の写真スポット。中でも一番迫力を感じるのは、正面玄関の大きな「龍と鳳凰」のレリーフ。これは中国文化で幸運と繁栄の象徴ですが、近くで見ると使用されている磁器の種類が実に多彩で、その緻密さに驚かされます。
壁の一部には有名な景徳鎮の磁器片が使用されていて、歴史的価値も抜群。細かいところまで観察してみると、同じ模様や形の磁器はほとんどなく、それぞれに異なる出自や背景が感じられます。「この陶片はどこのお皿だったのかな?」と想像しながら歩くのも、この場所ならではの楽しみ方でしょう。
また、階段や窓枠、扉の枠回りまで徹底的に装飾されているので、どこを見ても隙がありません。太陽の光が差し込むと、陶磁器の表面がキラキラと輝き、息を呑むほど美しい瞬間に出会えるはずです。SNS映えを狙うなら、朝や昼下がりの光が差し込むタイミングが特におすすめです。
3.2 庭園とその彫刻作品
磁器の家の庭園も必見です。外側にぐるりと囲むように配置された小道やベンチはもちろん、いたるところに陶磁器片で作られた動物や花の彫刻がちりばめられています。まるで異国のアートパークをお散歩しているような気分に浸れる、落ち着いた空間です。
池のほとりには、色鮮やかな鯉(こい)をかたどった陶器のオブジェや、亀や鳥など縁起の良い生き物を模した彫刻が飾られています。これらはすべて手作業で作られており、細やかな表情やユーモラスなポーズが来場者に人気です。庭の小道を歩きながら、「次はどんな彫刻が見つかるかな?」と童心に返って楽しめます。
季節ごとに植栽や花壇も丁寧に手入れされているため、春は色とりどりの花々と陶磁器のコントラストが美しく、秋には落ち葉と青磁の柔らかな雰囲気が心に残ります。お天気の良い日に庭園でのんびり過ごし、美しいアートと自然の融合をじっくり味わってはいかがでしょうか。
3.3 驚きのガラスの廊下
磁器の家の中で一番のユニークなスポットのひとつが、ガラス張りの廊下です。床も壁も天井も透明なガラスでできていて、まるで空中を歩いているかのような不思議な感覚に包まれます。ガラスの下には陶磁器の破片が敷きつめられ、上から覗き込むと美しいモザイク画のようです。
この廊下はもともと「空間と時間を超えるアート体験」をコンセプトに設計された場所。昼間は天窓から自然光がたっぷり降り注ぎ、内部に飾られた磁器片が一層きらめきます。夜はライトアップされて、モダンで幻想的な空間へと変身。どんな時間帯でも新鮮な感動が生まれますよ。
また、小さなお子さん連れでも安心して歩けるほど頑丈な造りになっているので、家族みんなでアート体験ができます。ガラスの反射や影を利用した写真撮影もおすすめです。ここで撮った写真は、きっと旅の思い出の1枚として大切なものになるでしょう。
4. 磁器の家周辺のスポット
4.1 天津の美味しいグルメ
天津はグルメの街としても有名です。磁器の家を訪れた後は、ぜひ周辺で天津ならではの味覚を堪能してみてください。特に人気なのが「天津包子」。近くの老舗店「狗不理包子」は、ふっくらとした皮にジューシーな餡がたっぷり詰まっていて、地元の人にも観光客にも大好評です。
他にも、「煎餅果子」という天津流のクレープや、「麻花」と呼ばれるねじり揚げ菓子もおすすめ。街中の屋台やカフェで気軽に味わえるので、食べ歩きにもピッタリです。さっぱりとした味が特徴の天津麺料理や、新鮮な魚介を使った家庭的な料理も人気があります。
カフェやおしゃれな茶館も多いので、散策途中のブレイクにも困りません。磁器の家から徒歩圏内には、インテリアにこだわったカフェやスターバックスリザーブもあり、世界中の観光客が集うスポットです。食事を楽しみながら、一日の余韻をゆったり味わいましょう。
4.2 周辺のショッピングエリア
磁器の家周辺には、伝統と現代が交差するショッピングエリアが点在しています。太原道や和平路は天津を代表する繁華街で、老舗百貨店やブランドショップが立ち並びます。地元の人だけでなく、海外からの観光客もショッピングを楽しみに訪れるスポットです。
中国伝統雑貨や陶器専門店も多いので、旅の記念に小さな食器やアクセサリーを探してみるのもおすすめ。手作りのガラス細工や刺繍小物、天津限定デザインのお土産も豊富なので、友人や家族へのプレゼント選びにも困りません。
また、近年はおしゃれなブティックやギャラリーカフェも続々オープンしています。若いクリエイターによるアート雑貨や、ハンドメイドアクセサリーなど、ここでしか出会えない掘り出し物も見つかるはずです。観光とショッピングを合わせて楽しみましょう。
4.3 近隣の文化施設や美術館
磁器の家の周辺には、他にも見逃せない文化スポットがたくさんあります。たとえば、「天津博物館」では、天津の歴史や伝統工芸品の展示をじっくり楽しめます。扇子や書画、磁器の名品など、中国の奥深い文化を学べる絶好の場所です。
美術好きなら「天津美術館」もおすすめ。現代アートや地元アーティストの作品展が定期的に開催されており、最先端の中国芸術に触れられるチャンスがあります。伝統工芸と現代アートの両方に興味がある方には、まさに理想的な旅程になるでしょう。
その他、近くには「五大道」エリアもあり、かつてのヨーロッパ建築が立ち並ぶおしゃれな街並みが広がっています。ゆっくりと街歩きを楽しみながら、天津独特の文化の香りを存分に味わってください。
5. 旅のヒントと注意点
5.1 季節ごとの楽しみ方
磁器の家は、一年を通してそれぞれ違った魅力があります。春は新緑と花が満開になり、陶磁器の色彩がより鮮やかに引き立ちます。ガーデンの散策も気持ちよく、写真を撮るにも絶好の季節です。
夏は日差しが強いですが、木陰の多い庭園や涼しげな青磁カラーが清涼感を与えてくれます。秋になると気温が下がり、澄んだ空気のもと陶磁器のきらめきが一層際立ちます。紅葉と磁器のコントラストもとても美しいですよ。
寒い冬もおすすめです。雪が降ると、磁器の家はまるで童話の世界のような幻想的な姿に。内部の展示スペースは暖かく、静かな雰囲気でゆっくりとアートを楽しめます。どの季節でも、時間の移り変わりによる光と磁器の“出会い”をじっくり楽しんでみてください。
5.2 入場時間と料金の情報
磁器の家は、毎日午前9時から午後5時までオープンしています。最終入場は午後4時30分頃なので、余裕を持って計画しましょう。特に週末や祝日は混雑しやすいので、朝早い時間帯に訪れるのがおすすめです。
入場料は大人で60元ほど(2024年時点)、小学生や学生、シニアは割引料金が設定されています。また、ガイド付きツアーの追加料金もリーズナブルなので、建物のこだわりや歴史をもっと詳しく知りたい方は事前に予約しておくと安心です。
最新の営業情報やイベント告知は、公式サイトやWeChatの公衆号などで発信されています。料金や営業時間が変更される場合もあるため、訪問前に一度チェックしておくとトラブル防止に役立ちます。
5.3 快適な旅のための交通手段
磁器の家は市内中心部にあり、アクセスも非常に便利です。天津地下鉄3号線の「和平路」駅から徒歩で約5分。市バスやタクシーも多く利用できるので、初めての方でも迷う心配がほとんどありません。
また、天津駅から歩いても15分ほどと近いので、市内観光ついでに立ち寄るにも最適です。周辺は歩行者天国になっているエリアも多いため、のんびり散策しながら到着するのも気持ちがいいですよ。夏の暑い日は飲み物の持参を忘れずに。冬の冷え込む日は、マフラーや手袋が必須です。
お土産をたくさん買いたい方は、ショッピングバッグやリュックを持参すると便利です。せっかくの旅なので、交通はゆとりをもって安全第一で楽しみましょう。
終わりに
天津の磁器の家は、その美しいデザインと圧倒的なスケールで、訪れる人の心をわしづかみにします。伝統と革新が見事に融合した空間は、ただの観光名所ではなく、中国のアートや歴史、街の文化の息遣いを体感できる場所です。グルメやショッピング、周辺の文化施設もあわせて、天津の豊かな魅力を満喫できます。
次の旅先に迷ったら、ぜひ天津へ、そして磁器の家で新しい発見と思い出を作ってみてください。色彩とアートの世界で、きっと心が躍るはずです。旅する喜びを、天津で味わってみませんか?