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   中国の地熱エネルギーとバイオマスの利用

中国の地熱エネルギーとバイオマスの利用

日本の読者の皆さんは、中国といえば「世界の工場」や巨大な経済大国のイメージを持たれるかもしれません。けれども近年、中国は環境問題への対応や持続可能な成長を目指して、再生可能エネルギーの導入に非常に積極的です。太陽光や風力発電がよく注目されますが、実は地熱エネルギーやバイオマスエネルギーの分野でも独自の進展を遂げています。本稿では、中国における地熱エネルギーとバイオマスの利用の現状から、多様な技術の実際の応用、政策制度、今後の展望までを包括的にご紹介していきます。中国の経験や取り組みは日本にとっても学ぶべき多くのヒントを与えてくれるでしょう。

目次

1. 中国における地熱エネルギーとバイオマスの現状

1.1 再生可能エネルギー政策の背景

21世紀初頭以降、中国は急速な経済発展を遂げる中で、「エネルギー消費大国」となっていきました。その結果、大気汚染やCO2の排出量増加といった深刻な環境問題にも直面しています。これを受けて、2000年代中盤から再生可能エネルギーの推進が国家レベルの重要課題となりました。特に2005年の「再生可能エネルギー法」制定以降、風力・太陽光発電の大規模導入はもちろん、地熱・バイオマスといった様々なエネルギー源も積極的に取り上げられるようになりました。

こうした背景には「エネルギー供給の多様化」「地方の経済振興」「温室効果ガスの削減」といった目的があります。特に地域差の大きい中国では、地域ごとに賦存する再生可能資源の活用が重視されているのが特徴です。地熱資源に恵まれた華北や雲南、バイオマス資源に富む東北・南部地域など、各地で特性にあった政策が打ち出されています。

一方で、これらのエネルギー源はまだまだ石炭や石油といった従来型エネルギーに比べると割合は小さいものの、国策としての後押しと技術革新によってその存在感は年々高まっています。今や中国の再生可能エネルギー施策は、世界的にも注目の的となっています。

1.2 地熱エネルギー開発の現状と動向

中国の地熱エネルギー開発は1950年代から本格化しましたが、いわゆる「地熱発電」が大規模に導入されるようになったのは2000年代に入ってからです。中国地質調査局のデータによると、中国はアイスランドやニュージーランドに次ぐ世界有数の地熱資源国であり、推定総資源は5700万トン石油換算とされています。

利用方法としては、特に「地熱でお湯を供給」する形が一般的に広まっています。有名な例では河北省や北京郊外、雲南省昆明などで地熱を暖房や入浴、温室栽培用ヒーター、水産業の加温などに幅広く活用しています。一方で、地熱発電は主に雲南省や四川省、チベット自治区などで進んでいます。特にチベットのヤンバジャン(羊八井)地熱発電所は中国最大級であり、100MW超の規模を誇り、10万人規模の都市需要をまかなっています。

また、地熱ヒートポンプも都市部の新築マンションや公共施設で普及しつつあり、北京、天津、瀋陽などの北部都市では冬季の行政サービスとしても地熱地域暖房が発達しています。今後は更なる地熱発電所建設だけでなく、都市の冷暖房、工業プロセス熱への応用も期待されています。

1.3 バイオマス利用の進展状況

中国のバイオマス利用は、農村のエネルギー需要をカバーする伝統的な薪炭利用に始まり、近年ではバイオマス発電やバイオ燃料生産といった先端的な技術まで発展しています。現在、バイオマス発電総出力は1800万kWを超え、風力や水力とともに「第三の柱」としての存在感を増しています。

注目すべきは、農業・林業・畜産残渣など豊富な資源を有効活用している点です。例えば、黒竜江省や江西省では農業残渣からのバイオマス発電が、広東省や浙江省では都市ごみや廃棄物を使った発電・熱供給事業が進展しています。さらにバイオガス(メタンガス)生成プラントも100カ所以上にのぼり、農村の台所燃料供給という伝統的形態から都市近郊の産業規模へとシフトしています。

燃料分野でも「バイオエタノール」「バイオディーゼル」など輸送用燃料の生産が拡大し、その製造過程で発生する副産物が家畜飼料や有機肥料として再利用されるなど、資源循環型のビジネスモデルも整ってきました。

2. 地熱エネルギーの種類とその利用方法

2.1 地熱発電と熱利用のメカニズム

地熱エネルギーには大きく分けて「発電用」と「熱利用用」の2つの利用形態があります。発電用の地熱は、高温(150℃~300℃)の蒸気や湯を利用してタービンを回し、電力を生み出します。中国の雲南・チベットの火山帯では、地下資源の豊富さからこの形態の発電所が存在します。

一方、熱利用型の地熱は、中~低温(40℃~90℃)の温泉水や地下水を直接、暖房や温水供給に利用します。例えば、住宅の床暖房や温水プール、温室農業、また工場の冷暖房設備に活用でき、季節変動の少ない安定した熱源として重宝されています。

面白いのは、近年普及している「地熱ヒートポンプ」。これは地下の比較的安定した温度差を利用して、効率的に冷暖房を行うシステムです。例えば冬は地中の暖かい熱を建物内に取り込み、夏は室内の熱を地中に逃すことで省エネ効果を発揮します。北京市内の新設公共施設やマンションでは、この地熱ヒートポンプが当たり前のように採用されています。

2.2 都市と農村における地熱エネルギーの応用

中国における地熱エネルギーの応用先は都市・農村で大きく異なります。都市部では主に暖房や給湯、ヒートポンプ冷暖房、温水プール運営など非発電用途が中心です。特に北京・天津など北部都市の新興住宅地では地熱ヒートポンプによる床暖房が急速に普及。数十万世帯規模の新築団地が地熱によって暖められています。

一方、農村部では温室農業や畜産業、水産業などの温度管理に地熱が利用されています。たとえば、河北省や山東省の農村では、冬季のトマト・キュウリなどの温室野菜栽培や、淡水魚の養殖場への加温用水供給に地熱が活かされています。これにより農産物の生産期間延長や収量向上を実現し、地域経済の底上げにも貢献しています。

また、観光・レジャー分野でも有名な温泉リゾートをはじめ、ホテル、スパ施設の温水供給源として地熱が役立っています。例えば雲南省大理の温泉観光地などでは、地熱資源を生かして都市全体が「温泉都市」としてのブランディングに成功しています。

2.3 地熱資源の分布と地域開発事例

中国の地熱資源は主に3つのエリアに集中しています。まず1つ目は華北平原を中心とする中低温地熱資源地帯で、北京市や天津市、河北省、山東省など人口密集地に多く分布しています。ここでは都市型の地熱暖房が盛んです。

2つ目は、雲南省やチベット自治区などの南西部火山帯地熱地帯。ここは比較的高温の地熱資源に恵まれ、発電用途の開発が積極化しています。特にチベットの羊八井地熱発電所や雲南省大理・麗江の中規模発電所が有名で、電力や熱供給の両面で地域社会を支えています。

3つ目は台湾や福建省など沿海火山地帯です。台湾では新北市の北投温泉など、古くから温泉旅館を中心とした観光産業の柱になってきた一方、福建省では工業用熱源や暖房用としての地熱活用が試みられています。このように、地域ごとの天然資源を生かした多様な応用が行われており、開発ノウハウの蓄積も進んできました。

3. バイオマスエネルギーの種類と技術

3.1 バイオマス発電と燃料化技術

中国ではバイオマスエネルギーの多様な技術が発展してきました。まず最も一般的なのが、バイオマス発電です。トウモロコシの茎やワラ、稲わらなどの農作物残渣をそのまま燃焼させ、蒸気ボイラーで発電する「直接燃焼法」が広く使われています。江蘇省、河南省など農業がさかんな省では数十MW規模のバイオマス発電所が次々と稼働し、余剰電力をグリッドに売電しています。

また、下水汚泥や家畜糞尿、食品残渣などの有機廃棄物から「バイオガス(メタンガス)」を発生させる嫌気性発酵技術も普及中です。発酵によって得られたバイオガスは、発電用や給湯用燃料として使われています。四川省など畜産の多い地域では、大規模畜産場に併設するバイオガスプラントが普及し、余ったガスをボトル充填して家庭用への供給も行われています。

さらに「バイオエタノール」「バイオディーゼル」といった液体燃料の生産も見逃せません。トウモロコシやサツマイモ、キャッサバなど糖質作物の発酵によるアルコール製造は東北地方・華中地方など広範囲に拡大し、自動車用燃料の一部を置き換える取り組みも国策の一環として進行しています。

3.2 農業・林業残渣のエネルギー活用

中国は世界でも有数の農業大国であり、米・麦・トウモロコシなどの栽培によって毎年大量の農作物残渣が発生します。「焼き畑」や「野焼き」は環境負荷が大きく、こうした廃棄物をエネルギー資源として活用することが推奨されています。例えば、数十万トン単位で発生する稲わらやトウモロコシの茎を圧縮成型し、バイオマス発電所や家庭用ストーブ燃料として利用する方法が拡大しています。

また、林業分野でも、伐採時の小枝・葉っぱ、製材時の端材やオガクズなどをチップ化・ペレット化し、燃料として再活用する取り組みが進展。黒竜江省や内モンゴル自治区では、林業廃棄物を地元発電所や暖房用ボイラーで消費し、田舎の冬季エネルギー問題を解決しています。

さらに、一部の搾油プラントやでんぷん加工工場などでは、発生する有機廃液や廃渣を嫌気性処理し、バイオガスや堆肥原料として再利用。「ゼロ・ウェイスト工場」実現に向けての取り組みは、企業や行政に共通する新たな課題にもなっています。

3.3 バイオマスエネルギーの地域経済への貢献

バイオマスエネルギーの推進は、単なる環境対策だけでなく「地域経済の活性化」にも寄与しています。たとえば、バイオマス発電所や燃料プラントの建設は地方雇用の創出につながり、関連サービス・物流など副次的な経済効果も大きいです。江蘇省のある村では、米ワラ発電所の操業に伴って十数人規模の雇用が生まれ、村の次世代を支える若者の定住率が高まった例があります。

加えて、こうした発電所が地元の農家と協力し、農作物残渣の集荷や運搬に農家の自家用車を利用したり、廃材回収を地元企業に委託したりすることで、地域経済に「新たな収入の流れ」を生み出しています。バイオガスやエタノール製造でも、発酵後に残る醗酵粕を有機肥料として販売するなど、一次産業とエネルギー事業が連動した持続可能な経済モデルが徐々に広がってきました。

また、農村部では、バイオマス利用の「セルフエネルギー化」が進展しつつあります。かつて灯油や石炭に頼っていた家庭エネルギーの多くが、地元産のバイオマス燃料へと切り替わりつつあり、燃料費の節約や地域資源の循環利用により、地元の自立型社会へのステップアップの重要な要素となっています。

4. 中国の政策・制度の推進体制

4.1 政府の政策的支援と規制枠組み

中国政府は再生可能エネルギー拡大への強い意志を反映し、地熱やバイオマスの分野にも明確な政策的支援を行っています。2006年改正「再生可能エネルギー法」では、地熱・バイオマスエネルギーも公式に「重点支援対象」へ格上げされ、各級政府による導入目標や補助金制度の整備が求められました。

また、「13次五ヵ年計画(2016~2020)」や「14次五ヵ年計画(2021~2025)」の中では、地熱暖房・発電やバイオマス発電、エタノール燃料について導入規模の具体的な数値目標も掲げられています。例えば、2025年までに地熱熱利用規模を7000万㎡以上、バイオマス発電容量を約3000万kWに拡大することなどが明示されました。

規制の面でも、火力発電所と比較した場合の環境基準の緩和や、バイオマス燃料の「グリーン認定」制度、各種排出基準の策定などが進められています。地方ごとに省政府や市政府レベルの条例も多く策定され、地域特性を生かした効率的導入が推進されています。

4.2 インセンティブ制度と投資促進策

新しい再生可能エネルギー事業の立ち上げには多額の投資が必要ですが、中国政府は各種インセンティブを用意して民間・外国資本の参入を促しています。代表的なのは、設備投資への直接補助金や国営銀行による低利融資制度、発電した電力の「全量買い取り制度」などです。

バイオマス発電では、電力グリッドへの接続義務や「フィード・イン・タリフ=固定価格買取制度」など、安定した収益モデルを実現する政策が採られています。地域ごとに収集運搬費や原材料調達コストを補助する条例も存在し、資源が分散している場合でも事業者のリスクを抑える仕組みがあります。

また、産業パークやエコタウンに限定して法人税減免・土地賃料優遇などの「特区施策」も導入。海外からの先端技術導入や外資系企業の誘致にも積極的で、日系を含む多国籍企業の参入事例も出てきています。これにより都市型・農村型双方で地熱およびバイオマス関連ビジネスの新規プロジェクトが活発化しています。

4.3 国際協力と技術導入の取り組み

中国は再生可能エネルギーの推進と同時に、国際的な技術・知見の導入にも力を入れています。例えば、アイスランドやドイツ、アメリカ、日本などと地熱発電技術の共同研究や専門家交流を活発に行ってきました。特にノウハウが評価されるアイスランドとは、地熱発電所の設計や地下調査ノウハウの移植、現地技術者の長期研修など実務レベルの協力例も多いです。

バイオマス分野では、欧州連合(EU)やアメリカとの間で廃棄物発電技術・ペレット化技術・バイオガス生成装置の移転プロジェクトが進行。また、日系企業のバイオエタノール製造技術や高効率バイオガス発生装置の導入も複数箇所で実績を上げています。

今後も国際機関との合同プロジェクトや共同規格策定、中国国内での国際シンポジウム開催などを通して、世界最新の再生可能エネルギー知見の取り込みを続けています。各分野の高度化や安全性向上、産業競争力強化には国際レベルでの連携が不可欠と考えられており、国外との共同研究拠点設立や外国人専門人材の招聘も進みつつあります。

5. 地熱エネルギー・バイオマス利用における課題

5.1 環境影響と持続可能性の確保

地熱エネルギーやバイオマス利用にも環境的課題はつきまといます。例えば、地熱活用では地下水や地層に与える長期的影響や、地熱発電所における微量ガス・重金属排出といった問題が指摘されています。過剰な抽出による地盤沈下、水資源の枯渇、地中温度低下などをもたらす恐れもあるため、専門機関によるモニタリングや持続可能な運用計画が必要不可欠です。

一方、バイオマス発電では、燃焼時の窒素酸化物や粒子状物質の排出、原材料確保のために農地転用や過剰伐採・過剰収穫が発生するリスクもあります。特に穀物系バイオ燃料の生産が大規模化すると、食料との競合問題や土壌劣化の懸念が浮上します。これらを抑えるために、原料調達の管理基準や土地利用ルールの明確化、余剰資源活用の徹底が重要になってきました。

また、メタン発酵など発酵過程でのバイオガス施設においても、処理後の廃液や脱水汚泥の適切な排出処理や、臭気対策など生活環境への配慮も社会的求心力を高めるために欠かせません。

5.2 技術的・経済的課題

技術面では、高効率な熱抽出やバイオマスの完全燃焼、高精度の発電機器や発酵・精製設備の導入には相応のノウハウとコストが必要です。たとえば、地熱発電では地下掘削技術や高温機器の信頼性、長期間安定稼働するためのモニタリング体制など、先進国レベルのシステム構築が求められています。

バイオマス分野では、原材料の常時安定供給体制や集荷・貯蔵インフラ、高効率ボイラーやガス化設備の導入への初期投資負担が課題です。燃料用バイオマス価格の変動や原材料調達の季節変動、運搬距離によるコスト増加といった現場ならではの苦労もあります。特に農村部は集約度や資金力の面で都市部より山積する課題が多く、自治体による投資支援や研究開発の促進策が求められています。

付加価値を高めるためのバイオ製品多様化(バイオプラスチック、バイオ肥料等)や、最先端の監視・分析機器の導入技術はまだ道半ばの部分もあり、官民が一体となったイノベーション推進が不可欠です。

5.3 社会・文化的な障壁とその克服

地熱やバイオマスの導入がスムーズに進まない背景には、社会的・文化的な壁も存在します。新しい技術の導入には住民理解や啓発が不可欠ですが、「臭いや騒音が出るのでは」「地下水が減るのでは」といった誤解や心配の声が根強いのが実情です。農村部では「先祖代々の土地を地下掘削すること」に抵抗感を持つ人も少なくありません。

うまく解決を図るには、行政・企業・住民がしっかり話し合い、現場見学会や体験イベントなどを通じて、不安や疑問を一つずつ潰していくことが重要になってきます。たとえば地熱マンション開発の際には、建設前の地域説明会や地下水位の変化調査、周辺環境の定期モニタリングを公開し、住民の意見を反映させることで、徐々に社会的合意形成が図られる例も多いです。

「伝統エネルギー志向」や「新しいものへの拒否感」は一朝一夕で克服できるものではありませんが、中国では教育プログラムやメディアを活用した情報発信、若者向けの副業支援制度創設など、啓発・参加型の政策が少しずつ広がっています。

6. 日本への示唆と今後の展望

6.1 中国の事例から学ぶべき点

中国の地熱エネルギーやバイオマス利用の事例を見ると、日本にとって多くの示唆が得られることがわかります。まず、地域ごとの資源分布や社会的背景に即した「多様な導入モデル」を構築してきた点が非常に参考になります。たとえば、北部都市の地熱暖房や、農村のバイオガス普及モデルなどは、日本の地方都市や過疎地にもカスタマイズ可能な事例となり得るでしょう。

また、中国は「大規模インフラ整備」+「小規模地域密着型」の両面展開を巧みに使い分け、エネルギーの地産地消促進や地域経済への効果を最大化しています。一方、日本では再生可能エネルギーは主に全国一律の制度設計で進められがちですが、中国のように地域の特色を存分に生かした柔軟な政策運営は今後大いに参考になるはずです。

そして、制度面でも「資源循環とビジネス化」を両輪で推進できている点、行政主導のインセンティブ、民間企業の参入促進策、日々変化する社会的合意形成の仕組みなど、日本の再生可能エネルギー推進に足りないピースを埋めるヒントがたくさん隠されています。

6.2 日中協力の可能性とその意義

日中両国はエネルギー構造や社会課題、技術水準が部分的に異なるものの、互いに学び合い高め合うべき分野は数多く存在します。例えば、日本は長年にわたり地熱開発やバイオマス発電技術の高効率化、省エネ運転ノウハウを蓄積してきました。一方、中国は規模の経済とスピード感、地方創生の新モデル構築という点で優れた実績をあげています。

両国が連携すれば、地熱発電所やメタン発酵施設の共同建設、省エネ機器の共同開発、原材料供給から製品流通までのサプライチェーン最適化などが現実味を帯びてきます。さらに人材交流や共同研究、学生や技術者の現地体験プログラムなどにより、新たな知識やイノベーションの波及効果も期待できます。

また、日中いずれの社会も「高齢化」「地方産業の空洞化」といった共通課題を抱えており、環境・資源・地域活性化をトータルに解決するヒントを分かち合うことこそ、長期的なパートナーシップの礎になるでしょう。

6.3 将来展望とイノベーションの方向性

中国における地熱・バイオマス利用の流れは今後加速していくと予想されます。今後は「スマートグリッド化」「AI・IoTを活用した自動運転管理」などデジタル化との連動が進み、省エネルギー運用やリアルタイムの発電効率最適化など、新たなイノベーション領域が登場してくるでしょう。

また、カーボンニュートラルの実現に向け、単一エネルギー源よりも「地域ごとの最適ミックス」が主流になると考えられます。地熱×太陽光×バイオマスの複合型エネルギーセンター、プラスバリューチェーン全体のCO2削減が大きな鍵となります。都市農村問わず、必要な場所に必要な形で再生可能エネルギーを最大活用する仕組みが広がっていくでしょう。

日本を含むアジア全体でも「持続可能な地域社会」のモデルづくりがますます求められています。中国のパワフルな官民連携や、地域主導型のプロジェクト展開の経験は、日本の将来戦略を考える際にもきっと大きなヒントとなるはずです。双方が知見を持ち寄り、新しいイノベーションの波を起こしていけるかが、これからの両国の発展を左右していくことでしょう。

まとめ

以上、中国における地熱エネルギーとバイオマス利用の現状、技術、政策、課題、そして日本への示唆について詳しく紹介しました。中国は広大な国土と豊富な地域資源を活用しつつ、国際連携やイノベーションにより再生可能エネルギー社会の実現に向かって着実に歩みを進めています。日本もこれらの事例からさまざまなことを学び、独自の地域性や技術力を生かして未来志向のエネルギー戦略を描くことが求められるでしょう。今後の日中協力やアジア全体での再生可能エネルギーの発展が、よりよい社会と地球環境のための大きな一歩となることを期待したいと思います。

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