無錫(むしゃく)、この人口約650万人を誇る中国の都市は、風光明媚な太湖(たいこ)のほとりに位置し、古くから文化と産業の中心地として栄えています。しかし、無錫を語る上で忘れてはならないものがあります。それは、この街の美食、特に小籠包(ショウロンポウ)の存在です。無錫の小籠包は、その淡い皮と濃厚なスープ、そして絶妙な豚肉の餡で、多くの美食愛好家を惹きつけてやみません。
旅の始まりは、無錫市の中心部から少し離れた古い街並みが広がる南禅寺エリアです。ここは、歴史と現代が見事に融合した地域で、多くの人々が足を運びます。南禅寺の門をくぐり、賑わいを見せる市場を通ると、一際美味しそうな香りが漂ってきます。その香りの元を辿っていくと、一つの老舗小籠包店が現れます。
この店は、創業50年以上の歴史を持ち、無錫小籠包の伝統を忠実に守り続けていると言います。最初に頼むべきは、もちろん看板メニューの「無錫小籠包」。熱々でせいろから運ばれてくるその姿に、思わず期待が高まります。中から溢れ出るスープは、黄金色に輝き、口に含むとその濃厚さと旨味が口いっぱいに広がります。じっくり煮込まれた豚骨スープが、豚肉の餡と見事に調和し、その味わいに魅せられます。
無錫小籠包を堪能した後、次なる目的地は、街の西側に位置する無錫博物院の近くです。ここには、地元の人々に人気のある小籠包店が点在しており、それぞれが独自のアレンジと工夫を凝らしています。ある店では、海老や蟹肉をたっぷりと使った豪華版小籠包を提供しており、それはまさに贅沢そのもの。スープも通常のものよりさらにクリーミーで、海鮮の風味がふんだんに詰まっています。
さらには、無錫といえば忘れてはならないのが「紅焼排骨(ホンシャオパイクー)」です。この一品は多くの小籠包店でもセットで提供されており、小籠包と共にいただくことができます。豚のスペアリブを甘辛く煮込んだこの料理は、小籠包の優しい味わいと絶妙な対比をなしており、共に味わうことで、また新たな美味しさが生まれます。
夜の帳が降り始め、街はイルミネーションに包まれます。無錫の夜市は、まるで光のカーニバルのように活気に満ちています。家族連れやカップルたちが行き交う中、屋台の一角に佇む小籠包の屋台に立ち寄ることに。活気あふれる屋台で食べる小籠包はまた格別で、熱々のスープが冷たい夜風にほんのり温もりを与えてくれます。
そして、旅の最後には、有名な蠡園(りえん)へと向かいます。蠡園は、その美しい庭園と共に、おしゃれで高級感あふれるレストラン群で名高い場所です。ここでは、現代風にアレンジされた創作小籠包を楽しむことができます。トリュフやフォアグラを使用した贅沢な一皿は、一流レストランならではの工夫とこだわりを感じさせます。
無錫の旅は、美食探求の冒険そのものでした。無錫小籠包は、シンプルでありながら深い味わいを持ち、食べるたびに新たな発見があります。それは、ただの食事ではなく、無錫という街とその文化を味わう経験なのです。次回訪れる際には、きっとまた違った小籠包に出会えることでしょう。無錫の地に立つとき、その胸は再び期待と興奮でいっぱいになるに違いありません。